ドナルド・ギリース[中山智香子訳]
(2004年11月15日刊行,日本経済評論社[ポスト・ケインジアン叢書・第33巻],東京,xiv+343 pp., ISBN:4-8188-1703-1)
昨年出たことは知っていたのだが,買いそびれていた.経済学のポスト・ケインジアン叢書(第33巻)に含まれているのだが,どうみても科学哲学の本だよねえ.本書は,確率の概念史を通観し,古典的確率ならびに論理的確率を出発点として,その後の頻度的解釈・主観的解釈そして傾向性解釈を比較検討する.著者自身は一種の“多元的確率観”を提唱しているらしい.
【目次】
謝辞 vii
日本語版への序文 1
序文 4第1章 確率を解釈する手がかりの概観:歴史的背景 7
1 確率を解釈する手がかりの概観 9
2 1650年から1800年までの確率論の起源と発展:数学 12
3 1650年から1800年までの確率論の起源と発展:実践への応用と哲学 20第2章 古典理論 29
1 普遍決定論とラプラスの魔物 31
2 同等に確からしい場合 35
3 ヤヌスの面をもつ確率 37
4 なぜ確率論は古代世界で発展しなかったのか 42第3章 論理説 47
1 エドワード時代のケンブリッジ 49
2 論理的関係としての確率 55
3 測定できる確率と測定できない確率:無差別の原理 61
4 無差別の原理のパラドクス 66
5 パラドクスの解決法の可能性 72第4章 主観説 85
1 ラムジーによるケインズ批判 89
2 数学的確率の主観的基礎:ラムジー=デ・フィネッティの定理 92
3 ここでの公理体系とコルモゴロフの公理の比較 110
4 主観説における,見かけ上客観的な確率:可換性 115
5 独立性と可換性との関係(テクニカル) 123
6 デ・フィネッティの可換性還元への批判 126
7 ベイズ主義へのいくつかの批判 134
8 デ・フィネッティはいかにして主観的確率へと至ったか 137第5章 頻度説 145
1 科学としての確率論 147
2 確率の経験法則 152
3 限界頻度による確率の定義 159
4 ランダムさの問題(テクニカル) 170
5 ミーゼスの定理とコルモゴロフの公理の関係(テクニカル) 177第6章 傾向説(I):一般的概観 183
1 ポパーによる傾向説の導入 186
2 単一の事象には客観的確率があるのか 193
3 傾向説の分類 201
4 ミラー,晩年ポパー,フェッツァーの傾向説 204
5 傾向と因果性.ハンフリーのパラドクス 208第7章 傾向説(II):特定のバージョン 221
1 操作主義の批判:自然科学における概念革新の非操作主義的理論について 224
2 確率に関する言明の反証ルール 235
3 確率の経験法則からの逸脱 241
4 コルモゴロフの公理と傾向説(テクニカル) 255第8章 間主観的な確率と確率の多元主義的見方 269
1 間主観的確率 271
2 主観から客観への連続体 280
3 確率の多元主義的な見方 286第9章 多元主義の一例:自然科学と社会科学の違いについて 297
1 経済学における確率解釈を客観的よりも認識論的とする全般的な議論 300
2 自然科学と社会科学の違いに関するソロスの見解について 309
3 操作主義は社会科学にはふさわしいが,自然科学にはふさわしくないということ 317
参考文献 327
訳者あとがき 337