『計算統計 II —— マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺』

伊庭幸人他

(2005年10月28日刊行,岩波書店ISBN:4000068520

目次



第1章:伊庭幸人「マルコフ連鎖モンテカルロ法の基礎」をゆるりゆるりと読み進む.明らかに(というか当然のことながら),伊庭幸人『ベイズ統計と統計物理』(2003年8月27日刊行,岩波書店ISBN:4000111582書評)の続編を読んでいる心地が濃厚にする.簡単なMCMCの説明にはイジング・モデルを用いている(第1章)が,あまりに「簡単だ」とか「これだけだ」と言われると,かえって「ほんまですかぁ」と言いたくなるのだが……(あまのじゃく).

それにしても,このスタイルは「饒舌でいて寡黙」だと思う.この章だけで100ページを越す分量があるのだが,要するに「わかる人には楽しめるが,わからない人には〜」ということ.少なくとも前著『ベイズ統計と統計物理』は,この章に取り組む前の必読書だろう.もちろん,MCMC の考え方(イメージ)の説明はていねいで,実例も多く,きちんと読む価値はある.メトロポリス法とギブス・サンプラーの説明を読む.探索の可視化の図がいくつか載っているが,探索制約条件がない場合については,昨日の宮正樹さんの講義で見せてもらったP. O. Lewis の〈MCRobot 2.1〉でデモすることができるだろう.

平均 0,共分散を b とする2変量 x1,x2正規分布 N(0, Σ) については,条件付き分布がやはり正規分布をするので,ギブス・サンプリングはラクになる.こういう実例はしっくりと理解できる.あとは,高次元・多変量になった場合の MCMC サンプリングがきちんとイメージできるかどうか,そしてある確率分布を定常状態とするマルコフ連鎖がつくれるというところの納得が次の問題だろう.