呉永華
(1995年1月30日刊行,晨星出版社,臺中, 320 pp., ISBN:9575835018)
以前,台湾で出版されているという情報だけは得ていた『被遺忘的日籍臺灣動物學者』だったが,幸い知人のつてで入手することができた.同じ著者と出版社で『被遺忘的日籍臺灣植物學者』(1997年6月30日刊行,晨星出版,ISBN:9575835700)という姉妹編が出ている.これも機会があれば手にしたいと思うが,この2冊はすでに新刊では手に入らないそうだ.
『被遺忘的日籍臺灣動物學者』は台湾で出版された本なので,漢字の繁体字(つまり“舊字體”)が苦痛でない人であれば,まちがいなく読み通せると思う(その点,簡体字よりはラクだ).句読点が縦書き行のど真ん中に配置されているのにとまどうが,こういうビックリな組版もかの地ではきっと標準的なのだろう.
本書に取り上げられている動物学者たちの中でも,昆虫学者の比率が飛び抜けて高いのは,誰もがフォルモーサを目指した当時としては当然のことだ.この本の前半に登場する松村松年の自伝『松村松年自伝』(1960年12月25日刊行,造形美術協会出版局,ISBN:当然なし)が手元にある.彼が台湾に行った折の記述は意外なほどごく簡単なものだが(pp. 190-195),上記の本ではかなり大きな扱いを受けている.自らが創刊した昆虫学雑誌 Insecta Matsumurana などに台湾の昆虫に関するおびただしい数の論文を出したからだろう.もちろん,北大時代の弟子である素木得一(彼ももちろん載っている)を後任として台湾に派遣したこともあるにちがいない.
昨年出たという『臺灣昆蟲學史話』(2005年刊行,玉山社,台北)も,もし可能なら手に取って見てみたいなあ…….
【目次】
自序 1
作者簡介 3
巻一 多田綱輔 5
巻二 菊池米太郎 35
巻三 松村松年 51
巻四 素木得一 73
巻五 大島正満 103
巻六 黒田長禮 131
巻七 楚南仁博 161
巻八 堀川安市 197
巻九 青木文一郎 217
巻十 江崎梯三 241
巻十一 鹿野忠雄 277
圖片來源 319