『文字の母たち』

港千尋

(2007年3月23日刊行, インスクリプトISBN:9784900997165



いわゆるひとつの「ビニ本」か?某ジャンルの写真集と同じ扱いを受けているのか,どこの書店の店頭でもしっかり“ビニール”が巻かれている本.しかし,題材はけっして艶かしい写真集ではなく,フランスの古い印刷所とそこに保存されている歴史的な活字の写真集.ガラモン書体のギリシャ文字がとても妖しいぞ.読了.フランス国立印刷所に保存されている歴史的な活字と活版印刷そしてそれに携わる人たちを写し撮った写真集.“松葉”のごとくばらまかれたり,しっかりと板に組まれたりする活字,五百年も前の字体や活字が保存されているという.本書に登場する人たちはいずれも「最後の〜」とか「ただひとりの〜」と形容されている.もうすぐ姿を消す印刷文化の末期の姿ということだ.とりわけ,非ヨーロッパ系の活字(アラビア文字から漢字まで含む)を専門的に扱う“オリエンタリスト”たちの技はすごい.