Rolf Löther
(1972年刊行,VEB Gustav Fischer Verlag, Jena,285 pp., ISBNなし → 目次)
実にタイミングよく,ベルリンからバースデー・プレゼントが届いた.ここ何週間か,日独の郵便局相手に送金で手間どってしまったが,こうやってブツが届けばすべての苦労は消えてなくなる.本書のコピーは大学院生だった頃にすでに入手していたのだが,できることなら現物を手にしたかった.そう思いつつ長年探してきたのだが,たまたま機会があって手に入ったのは幸運としかいいようがない.
届いたのはいわゆる「献呈サイン本(Autographen)」で,内表紙には下記のような著者のサインが入っている:
Hrn. Hermann Ley in dankbarer und freundschaftlicher Verbundenheit vom Verfasser.
8. Mai 1972 / R. Löther
[Hermann Ley様へ,著者より感謝と友情をこめて,1972年5月8日,R. Löther]少し調べてみたところ,「Hermann Ley」とは著者と同時代の旧東独(DDR)のマルクス主義政治哲学者で(→「Hermann Ley (IDIH)」),本書の出版許可を与えたベルリン大学(Humboldt-Universität zu Berlin)哲学科の審査委員会委員のひとりだったことが奥付からわかる.
かつてのかの国の「計画出版体制」がどのようなものだったかは知る由もないが,発行部数はおそらく極端に少なかったのだろうと推測される.出版されたその時点で入手しないと,あとで後悔することが何度もあったからだ.
—— それにしても,ドイツ語の「筆記体」を読むのはとても苦労する.上のようなちょっとした自署であっても,活字が判読できない部分がある.いわゆる前時代的な「フラクトゥール書体」は Ernst Haeckel ら19世紀の本を通してある程度は慣れているつもりだが,筆記体はぜんぜん訓練できていない.