『1冊でわかる 科学哲学』

サミール・オカーシャ[廣瀬覚訳]

(2008年3月25日刊行,岩波書店[〈1冊でわかる〉シリーズ],vi+194+v pp.,本体価格1500円,ISBN:978-4-00-026896-7版元ページ



生物学哲学者サミール・オカーシャによる科学哲学の入門書.原書は:Samir Okasha『Philosophy of Science: A Very Short Introduction』(2002年7月15日刊行,Oxford University PressISBN:978-0192802835版元ページ).ざっと目次に全体をブラウズした感じでは,ぼくが理解する「科学哲学」のポイントはきちんと押さえられているようだ.個別科学の哲学では生物学の哲学が体系学に関する話題を提供している.

巻末に付けられている解説記事と日本語の文献リストはとても有用だ.ぼくの『系統樹思考の世界』も挙げられている.ありがとうございます.それにしても,ぼくが理解する「科学哲学」の和書のほとんどは,翻訳書も含めて,今から20〜30年も前に出版されている.現在では入手できないものもきっと少なくないだろう.残念なことだ.




【目次】
謝辞

1. 科学とはなにか 1

近代科学の起源 3
科学哲学とは何か 12
科学と擬似科学 14

2. 科学的推論 20

演繹と帰納 21
ヒュームの問題 27
最善の説明を導く推論 33
確率と帰納法 39

3. 科学における説明 47

ヘンペルによる説明の被覆モデル 48
対称性の問題 54
関連性欠如の問題 57
説明と因果性 58
科学ですべてが説明できるのか 64
説明と還元 68

4. 実在論反実在論 72

科学的実在論反実在論 73
奇跡論法 78
観察可能と観察不可能の区別 83
決定不全性論法 89

5. 科学の変化と科学革命 97

論理実証主義の科学哲学 98
科学革命の構造 101
通約不可能性とデータの理論負荷性 107
クーンと科学の合理性 115
クーンの遺産 118

6. 物理学・生物学・心理学における哲学的問題 122

絶対空間をめぐるライプニッツニュートンの論争 122
生物学的分類の問題 133
心はモジュール構造をしているか 143

7. 科学とその批判者 153

科学至上主義 154
科学と宗教 160
科学は価値観と無関係か 166


科学哲学によって〈つながる〉こと(直江清隆) 175

サイエンス・ウォーズのあとで 176
科学哲学から科学の哲学へ 181

日本の読者のための読書案内(廣瀬覚・直江清隆) 189



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