『動物学名の仕組み:国際動物命名規約第4版の読み方』

大久保憲秀

(2006年8月31日刊,伊藤印刷出版部,津,xvi+302 pp.,税込価格3,000円,ISBN:4990321901版元ページ



「国際動物命名規約」の“読み方”に関する参考書で,条文の詳細にわたる内容だが,関連するコラムが多数置かれていて,一般読者にも読むべき内容が少なくない.「学名本」というジャンルはつい身構えてしまうのだが,“法律書”という先入観があるからだろう.

以下,著者の大久保さんへ —— 【種】問題が「形而上学」的であるという私の主張は,生物学者にとってそれが関わりのない問題であるという意味ではありません.まったく正反対に,生物学の問題であって,同時に「存在の学」としての形而上学に踏み込む性格をもっているのが【種】問題であり,だからこそ生物学者だけではどうにも解決できない部分を長年にわたって抱えてきたのだと私は考えます.「存在」について問うというまさにその問題設定のあり方が形而上学的ということです.

ですから,ここで再び形而上学を切り離して,ピュアな“生物学”に沈潜することは問題解決への一歩ではなく,出発点への退歩であり,それでは何の展望も開けないでしょう.経験的データをさらに蓄積されれば【種】問題は解決に向かうだろうというのはまったく根拠のない楽観論ですね.心理的本質主義が単に追認されるだけだろうと私は考えます.生物学だけではどうにもならない問題がそこには厳然としてあるという基本的認識を私はもっています.