『生物哲学の基礎』

マルティン・マーナ,マリオ・ブーンゲ[小野山敬一訳]

(2008年7月26日刊行,シュプリンガー・ジャパン,xxii+558 pp., 本体価格13,000円,ISBN:9784431100256 [hbk] → 版元ページ(英語版)版元ページ(独語版)訳者サイト



生物学哲学の大著の翻訳だ.本書は一貫性のある“体系”としての生物学哲学を読者に提示している.この点で,最近,続々と出版されているあまたの生物学哲学の本とは一線を画しているといえるだろう.著者は論理数学と公理論に基づく体系の構築を目指していて,Joseph Henry Woodger や Søren Løvtrup が試みたような「公理論的生物学」となじみやすい肌ざわりがする.

内容をざっと概観する.哲学大系に関する総論としての第1部「哲学的基礎」に続く,各論としての第2部「生物哲学の根本的争点」においては,生命論・生態学・身心問題・体系学・発生学・進化論・目的論の順番で論じられている.

翻訳書で600ページ近くある大著であり,しかもささっと読み飛ばせるようなタイプの内容ではない.論理記号も頻出するので生物系の読者には敷居がやや高いかもしれない.おまけに,値段がちょい?高いのでまずは公費購入を考えるべきかも.しかし,こういうスタイルで書かれた生物学哲学の本は今ではめずらしいので(「孤高の異端」と呼ぼう),手に取る価値は高いと思われる.

訳者あとがきによると,最初に出た英語版(1997年)と改訂された独語版(2000年)をふまえ,さらに原著者による改訂・補足も含めているそうだ.たいへんな訳業だったと推測される.