『黄金郷(エルドラド)伝説:スペインとイギリスの探険帝国主義』

山田篤美

(2008年9月25日刊行, 中央公論新社中公新書1964], x+282 pp., 本体価格940円, ISBN:9784121019646目次版元ページ

書き散らしではないこういう新書に出会えたことは幸せだ.“エルドラト”伝説を原典資料にさかのぼって再検討している点で,また著者自身がこの地域に住んだ経験がある点で,ルポルタージュ的ないい本に仕上がっている.「探検とは侵略である」という著者のメッセージが通奏低音として鳴り続ける中,デフォーの『ロビンソン・クルーソー』の政治的意味,さらにはコナン・ドイルの『失われた世界』の典拠をめぐる新たな知見,さらには映画にもなった『パピヨン』の実在する主人公が脱走してからどのような人生を送ったかなど,“エルドラド”をキーワードとするさまざまな人物とできごとがタペストリーのように絵柄を見せてくれる.さ,みなさんもすぐ読みましょうね.