『百鬼夜行絵巻の謎』

小松和彦

(2008年12月21日刊行,集英社集英社新書ヴィジュアル版012V],ISBN:9784087204728書評版元ページ

カラー新書はコストパフォーマンスが高いのでありがたいです.本書の底流テーマは,現在まで伝承されている『百鬼夜行絵巻』の異本(variants)に関する写本系譜だ.さまざまな「絵巻」の間に見られる図柄の synapomorphy と autapomorphy を手がかりにして,それらの異本の由来を祖本の遡及を試みている.妖しく渦巻く黒雲に浮かび上がる怪しいシルエットがとても印象的だ.著者が中心となってつくられている国際日本文化研究センターの〈怪異・妖怪伝承データベース〉を久しぶりに覗いてしまった.これもまた白昼の〈百鬼夜行〉だ.