『Reason and Experience: The Representation of Natural Order in the Work of Carl von Linné』

James L. Larson

(1971年刊行,University of California Press, Berkeley, viii+171pp., ISBN:0520018346

『本』連載から指摘されていた,リンネ分類体系と命名システムの歴史についての記述をもういちど検討してみる.Scott Atran『Cognitive Foundations of Natural History: Towards an Anthropology of Science』(1990年刊行,Cambridge University Press, ISBN:0521438733 [hbk] / ISBN:0521438713 [pbk] → 目次)をもういちどひもとくと,「二名法」に基づく命名は,リンネに先立つ Andreas Cesalpino(1519-1603)や Joseph Pitton de Tournefort (1656-1708) がすでに用いていたと記されている.彼らの延長線上にリンネの「二名法」があるということ.Larson の本書はリンネ自身の分類学について知るための基本文献.

もちろん,Cesalpino や Tournofort の前にも「二名法」らしき命名システムはいくつか提唱されていたと Atran は言うが,そういう西洋本草学における“民俗分類”の「二名法」を,のちのリンネ分類における「二名法」と同一視すべきではないと彼は言う(Atran 1990, p. 131).そのような民俗分類での「二名法」は folk species とその下位にある folk variety の間にあるネーミングの体系であって,generic-specieme のレベルでのネーミングではないからだ.ついでに,Marc Ereshefsky『The Poverty of the Linnaean Hierarchy: A Philosophical Study of Biological Taxonomy』(2001年刊行,Cambridge University Press, ISBN:0521781701 [hbk] → 目次・部分書評)も参照しつつ,原稿の修正をちくちくと進める.付箋紙の「幟」がぱらぱらと立つ.

もうひとつの論文が本棚の後ろから出てきた:木村陽二郎 (1980), 自然誌の系譜と分類体系. Pp. 31-64 所収:村上陽一郎(編)『生命思想の系譜』(1980年2月25日刊行,朝倉書店[知の革命史4]).学部生のころに買ったものだが,なぜこの本を買ったのかは忘れてしまった.