「延長表現型としてのカバーとオビ」

本を買ったらオビやカバージャケットをすぐ捨てて“まるはだか”にして読むと明言していたのは確か椎名誠だった記憶がある.ワタクシも本を買ったらカバーやオビはすぐにはずすが,捨てるわけではない.読了したらまた巻き直すためにとっておくということ.かなり前のことだが,農環研の図書室に納品された公費購入本を登録のために持参したら,目の前でカバージャケットをぐしゃぐしゃに丸めて捨てられたことがある.他人の書いた本だが気分的に痛かった.ライブラリアン的には本の「本体」さえあれば,あとはなくてもいいものかもしれないが,著者的(あるいは編集者的もしくは装丁者的)にはそれらの附属物は,本体の“延長表現型”と見なしてもらわなければ困ることがある.たとえば,ワタクシの『系統樹思考の世界』や『分類思考の世界』はカバージャケットのウラ側に“隠し絵”が配置されていて本文と照応している.また,新書にしてはものすごく大きな(しかもカラフルな)オビを巻いているのも正当な意味がある.んなわけで,自著を農環研図書室に献本するときは,「カバージャケットとオビは廃棄しないでね」と必ずクギを刺すようにしている.