『地図趣味。』

杉浦貴美子

(2016年8月10日刊行,洋泉社,東京, 143 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784800309617目次版元ページ

地図インフォグラフィクスへの好奇心と偏愛的オブセッションが随所で炸裂するとてもいい本.第1章「偏愛地図コレクション」では,古今東西の歴史的な地図がいろいろ見られるのも楽しいが,第2章「地図をつくる」では実際に歩いてみたり,マップ情報を〈カシミール3D〉で編集・可視化したりと著者の地図フェチぶりは相当な重症とみた.さらに第3章「食べられる地形、身につける地図」の「地層ムース」とか「等高線ケーキ」とかもう着眼着想の勝利というしかない.著者には,ぜひわが農環研センターの〈土壌モノリス展示館〉に来ていただいて,日本各地・世界各地の土壌断面図をどんどん “ムース化” してほしい.等高線ケーキはワタクシ的にはクレープではなく生八ツ橋を重ねてほしかったな(そこかっ).最終章「地図をたずねる〈つくば編〉」では国土地理院産総研地質標本館が取り上げられているが,つくばにはもっとたくさんの “地図人間” が徘徊していると感じる.ワタクシのご近所にたむろするマップマンたち,おおいに喜べ.そして,著者の地図に対するこだわり方はヘンすぎてとてもいい.