『トウガラシの世界史:辛くて熱い「食卓革命」』

山本紀夫

(2016年2月25日刊行,中央公論新社中公新書・2361],東京, 8 color plates + x + 234 pp., ISBN:9784121023612目次版元ページ

米原産のトウガラシがどのように世界中に伝播していったかを世界史と絡めつつ解き明かす.ずっと昔から浸透していたと勝手に思い込んでいた韓国のトウガラシ食文化が実はほんの三世紀足らずの歴史しかなかったとか,四川料理のような激辛トウガラシ嗜好は中国の中では地域的にごく限定されているとか,甘味トウガラシであるパプリカがなぜハンガリー社会に広まったかは世界史と連動していたとか,本書には意外な指摘が随所に見つかる.

欲を言えば,カラー写真がもっとたくさんあればきっと食欲がより亢進したにちがいない.南米のトウガラシ原産地の紀行:高野潤『〔カラー版〕新大陸が生んだ食物:トウモロコシ・ジャガイモ・トウガラシ』(2015年4月25日刊行,中央公論新社中公新書2316],東京,vi+182 pp., ISBN:9784121023162版元ページ)の第4章「トウガラシ」(pp. 113-142)には,多様なトウガラシとそれを用いた料理の数々がカラー写真で掲載されている.

そういえば,ずいぶん前に “辛子色の本” を読んだことがあるぞと手繰ってみたら,この本だった:アマール・ナージ[林真理・奥田祐子・山本紀夫訳]『トウガラシの文化誌』(1997年12月30日刊行,晶文社, 東京, 311+ x pp., 本体価格2,800円, ISBN:4794963319目次・書評).本書『トウガラシの世界史』の著者も訳者のひとりとして関わっていたことを知った.