『系統体系学の世界:生物学の哲学がたどってきた道[仮題]』目次案

三中信宏
(2018年4月刊行予定,勁草書房[けいそうブックス],東京)

初校ゲラが出揃った.目次構成は以下の通り:

【目次案】※第12案(2017年12月18日時点)

まえがき —— では,トレッキングに出発しましょうか



プロローグ 科学という営みを生き続けること —— 自分史をふりかえりつつ

(1)夜明け前のこと —— 1980年まで
(2)結界に踏み込む —— 1980年から
(3)いま生きている科学とともに


第1章 第一幕:薄明の前史 —— 1930年代から1960年代まで

(1)活劇としての生物体系学がたどった現代史
(2)体系学曼荼羅〔1〕を歩く【チャート1-1, 1-2】
 ◇第一景:現代的総合前夜 —— 夜明け前の風景 1937〜1940【シーン1】
  1)ダーウィニズムの黄昏,アルファ分類学,実験分類学
  2)一般生物学に関係する体系学研究協会(ASSGB)と『新しい体系学』
 ◇第二景:現代的総合 —— 新世界にて 1939〜1949【シーン2】
  1)エルンスト・マイアーとナチュラリストの伝統
  2)種分化学会(SSS)から遺伝学・古生物学・体系学共通問題委員会(CCPGPS)へ
 ◇第三景:新しい体系学 vs. 古い体系学 —— 場外乱闘 1946〜1962【シーン3】
  1)進化学会(SSE)と動物体系学会(SSZ)の創立
  2)リチャード・ブラックウェルダーと「古い体系学」の反撃
 ◇第四景:ドイツ体系学の系譜 —— 体系の重み 1931〜1966【シーン4】
  1)パターンベース型研究としての生物系統学
  2)自然哲学(Naturphilosophie),観念論形態学,系統学
  3)オテニオ・アーベルによる形質進化方向性と系統推定論
  4)アドルフ・ネフの体系学的形態学と観念論系統学
  5)ヴァルター・ツィンマーマンの系統推定論
  6)比較行動学における系統推定論:ホイットマン,ハインロート,ローレンツ
  7)ゲルハルト・ヘベラーとナチス・ドイツ時代の進化生物学
  8)ヴィリ・ヘニック,系統体系学,そして分岐学へ
 ◇第五景:生物測定学から数量分類学へ —— 統計的思考 1936〜1963 【シーン5】
  1)ロナルド・フィッシャー,エドガー・アンダーソン,生物測定学
  2)ジョージ・シンプソンと『計量動物学』—— 統計学をめぐる世代間ギャップ
  3)ロバート・ソーカルと数量表形学の登場 —— コンピューター時代の幕が上がる


第2章 第二幕:論争の発端 —— 1950年代から1970年代まで

(1)ザ・ロンゲスト・デイ —— 進化体系学と数量分類学と分岐学の闘争【チャート2-1】
(2)体系学曼荼羅〔2〕を歩く【チャート2-2, 2-3】
 ◇第六景:分類は系統か類似か —— Systematic Zoology 誌に見る舞台袖での小競り合い(1956〜1959)【シーン6】
 ◇第七景:数量分類学の広がる波紋 —— 新アダンソン主義が体系学界に波風をもたらす(1958〜1965)【シーン7】
 ◇第八景:分岐学の第一のルーツ —— エドワーズ-カヴァリ=スフォルツァの最小進化法とカミン-ソーカルの最節約法(1963〜1967)【シーン8】
 ◇第九景:分岐学の第二のルーツ —— 系統シュタイナー問題への離散数学的アプローチ(1963〜1968)【シーン9】
 ◇第十景:分岐学の第三のルーツ —— ワレン・ワーグナーの祖型発散法による仮想共通祖先の復元(1950〜1969)【シーン10】
 ◇第十一景:分岐学の第四のルーツ —— ジェイムズ・ファリスのワーグナーアルゴリズムと数量分岐学の登場(1969〜1970)【シーン11】
 ◇第十二景:分岐学の第五のルーツ —— ヘニック系統体系学の英語圏での受容(1965〜1975)【シーン12(原景)】【シーン12(異景1)】


第3章 第三幕:戦線の拡大 —— 1970年代から現代まで

(1)生きている科学の姿をとらえること
(2)体系学曼荼羅〔3〕を歩く【チャート3-1, 3-2】
 ◇第十三景:分岐学革命 —— ガレス・ネルソンによるヘニック理論の受容(1969〜1973)【シーン13(原景)】【シーン13(異景)】
 ◇第十四景:発展分岐学 —— 体系学的パターン理論の数学的体系化(1973〜1981)【シーン14(原景)】【シーン14(異景)】
  1)ネルソン原稿(1976):分岐図と系統樹を分ける
  2)分岐成分分析:パターン分岐学が確立する
  3)体系学的パターンは進化プロセス仮定に先行するか
 ◇第十五景:最節約原理 —— 樹形探索と祖先形質状態復元の方法論(1981〜1987)【シーン15(原形)】【シーン15(異景)】
 ◇第十六景:ヴィリ・ヘニック学会 —— 創立から論争そして対立へ(1980〜現在)【シーン16】
 ◇第十七景:分断生物地理学 —— 体系学から地理的分布パターンへの外挿(1974〜現在)【シーン17】
 ◇第十八景:パターン分岐学ふたたび —— 三群分析法をめぐる論争の経緯(1991〜現在)【シーン18】
 ◇第十九景:分子体系学 —— 確率論的モデリングに基づく系統推定論(1981〜現在)【シーン19】
 ◇第二十景:文化系統学 —— 言語・写本・文化・遺物の系統体系学(1977〜現在)【シーン20】


第4章 生物学の哲学はどのように変容したか:科学と科学哲学の共進化の現場から

(1)統一科学運動とグローバルな生物学哲学の伝統 —— ウッジャーとグレッグの公理論的方法(1959年以前)
(2)ローカルな個別科学への生物学哲学の適応 —— ベックナーの系譜とポパーの登場(1959年〜1968年)
(3)現代的総合の残響のなかでの胎動 —— マイアー,ギゼリン,ハル(1969年)
(4)生物学哲学のローカル化は体系学に何をもたらしたか —— 学派間論争の時代を経て(1970年〜現在)


第5章 科学と科学哲学の共進化と共系統

(1)序奏:科学者と科学哲学者のある対話から
(2)主題:多様な科学のスペクトラムは連続している
(3)変奏:三つのケース・スタディー
   1)系統推定論 —— 仮説演繹主義,反証,アブダクション
   2)験証可能性 —— 論理確率,背景仮定,裏付け,厳格性
   3)最節約原理 —— オッカムの剃刀,最小化,最尤推定
(4)コーダ:科学は科学哲学を利用し,科学哲学も科学を利用した


エピローグ 科学の百態 —— 生まれて育って変容し続ける宿命のもとに

(1)科学の本質をめぐる論争 —— スティーヴン・ジェイ・グールド vs. ディヴィッド・ハル
(2)科学の系譜が問われるとき —— ある歴史の蹂躙から学ぶべきこと
(3)クオ・ヴァディス? —— “May you live in interesting times”


あとがき —— とある曼荼羅絵師ができあがるまで



謝辞
文献リスト
索引