「『The Book of Circles — 円環大全』ブックフェア選書リスト」

マニュエル・リマ[三中信宏監訳|手嶋由美子訳]『The Book of Circles —— 円環大全:知の輪郭を体系化するインフォグラフィックス』(2018年2月26日刊行,ビー・エヌ・エヌ新社,東京,278 pp., 本体価格3,800円, ISBN:9784802510707版元ページコンパニオン・サイト)の出版を記念してブックフェアが開催されている.監訳者であるワタクシがつくったブックフェア用の選書リストは下記の通り.すでに絶版になっている本やまだ出版されていない本もありますが(こらっ),もし通りがかったら手に取ってください.

『The Book of Circles — 円環大全』ブックフェア選書リスト

  • マニュエル・リマ[久保田晃弘監修/奥いずみ訳]『ビジュアル・コンプレキシティ:情報パターンのマッピング』(2012年3月,ビー・エヌ・エヌ新社,東京,272 pp., 本体価格3,800円, ISBN:9784861007835)※コメント「最先端のコンピューター・ツールを用いて情報の可視化とマッピングを行なう数々の技法をみごとなカラー図版とともに示している.階層的かつ分岐的なツリーからより複雑なネットワークへと移行するための思考の転換を迫る意欲作.」
  • マニュエル・リマ[三中信宏訳]『THE BOOK OF TREES — 系統樹大全:知の世界を可視化するインフォグラフィクス』(2015年3月,ビー・エヌ・エヌ新社,東京,215 pp.,本体価格3,800円,ISBN:9784861009563)※コメント「系統樹という図像表現が,800年前の中世記憶術から現代の先端的インフォグラフィクスまで,連綿と続いてきたその長い歴史をたどる旅.意匠やデザインのもつ想像を超えた生命力には圧倒される」
  • ゴットフリート・ベーム[塩川千夏・村井則夫訳]『図像の哲学:いかにイメージは意味をつくるか』(2017年9月,法政大学出版局[叢書ウニベルシタス・1066],東京, viii+301+19 pp., 本体価格5,000円, ISBN:9784588010668)※コメント:「図像やダイアグラムは文字テクストとは別の次元で独自のイメージ世界を形成している.新たな図像学の立場から視覚的記号がどのような意味をもつのかに関して広範な事例を挙げながら考察した大胆な著作」
  • オットー・ノイラート[永原康史監訳|牧尾晴喜訳]『ISOTYPE[アイソタイプ]
    (2017年6月,ビー・エヌ・エヌ新社,東京,319 pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784802510653)※コメント:「世界共通の図像言語体系を構築しようとしたノイラートはウィーン学団を立ち上げた科学哲学者である.彼の統一科学運動に連なる成果としてのアイソタイプ言語は,いまや世界中で受け入れられている.グラフィック可視化の精神を理解する基本書.」
  • ヴァシリー・カンディンスキー宮島久雄訳]『点と線から面へ
    (2017年4月,筑摩書房ちくま学芸文庫・カ44-1],253 pp., 本体価格1,000円, ISBN:9784480097903)※コメント:「造形とフォルムのもつ論理的な意味をまるで数学書のようにきわめて理知的に論じた本.」
  • パウル・クレー土方定一・菊盛英夫・坂崎乙郎訳]『造形思考(上・下)
    (2016年5月,筑摩書房ちくま学芸文庫・ク25-1, ク25-2],472+350 pp., 本体価格1,600+1,500円, ISBN:9784480096012 / ISBN:9784480096029)※コメント:「美術・デザインはもちろん物理学・光学・生物学・音楽まで含む内容で,「アクティヴ―パッシヴ」「静―動」「冷―暖」など対比図式がポイント.その根幹は静的な「フォルム」ではなく動的な「造形」にあると著者は言う.」
  • ティム・インゴルド[工藤晋訳]『ラインズ:線の文化史』(2014年6月,左右社,東京,267+viii pp., 本体価格2,750円, ISBN:9784865281019)※コメント「もっとも単純な図形である “線” がもつきわめて奥深く豊かな広がりを文化・芸術・思想・認知・系譜など異なる視点から考察した本.“線”のもつ動きと変化と広がりにはさまざまな情報や意味をもたせることができる.」
  • 三中信宏思考の体系学:分類と系統から見たダイアグラム論』(2017年4月,春秋社,東京,6+316+23 pp., 本体価格2,500円,ISBN:9784393333556)※コメント:「森羅万象の事物と知識を体系化する分類学と系統学.本書ではアリストテレス以来2000年に及ぶ生物学に焦点を当て,カテゴリー分けをする分類学と系譜をたどる系統学がどのようなダイアグラムを可視化ツールとして用いてきたかを論じる.」
  • 三中信宏系統体系学の世界:生物学の哲学がたどってきた道』(2018年4月刊行予定,勁草書房[けいそうブックス],東京)※コメント:「地球上の生物多様性の様相と起源を解明しようとする系統体系学がたどってきた過去一世紀の歴史をその科学史と科学哲学に着目して論じた新刊.分類と系統のダイアグラムを科学者たちがどのように用いてきたかに注目した.」
  • 三中信宏統計思考の世界:曼荼羅で読み解くデータ解析の基礎』(2018年4月刊行予定,技術評論社,東京)※コメント:「データ解析の道具として重宝されている統計学は計算だけしていればすむわけではない,大量の複雑なデータを視覚化することが実はもっともたいせつな第一歩であると私は考えている.ヴィジュアルな統計データ解析の新刊.」
  • C・G・ユング[ソヌ・シャムダサーニ編/河合俊雄監訳|河合俊雄・田中康裕・高月玲子・猪股剛訳]『赤の書[テキスト版]』(2014年8月,創元社,大阪, ISBN:9784422115771)※コメント:「長年にわたって封印されてきたユング畢生の奇書.図像のもつ魔力のようなパワーを実感するには『赤の書[図版版]』と合わせて鑑賞するしかない」
  • C・G・ユング赤の書[図版版]』(2018年1月,創元社,大阪, ISBN:9784422116754)※コメント:「巨岩のようなC・G・ユング[ソヌ・シャムダサーニ編/河合俊雄監訳|河合俊雄・田中康裕・高月玲子・猪股剛訳]『赤の書』(2010年6月,創元社,大阪, ISBN:9784422114361)から切り出された図版集.マジカルパワー炸裂.」
  • 古賀弘幸『文字と書の消息:落書きから漢字の文化誌まで』(2017年4月,工作舎,東京, ISBN:9784875024842)※コメント:「文字という記号が世の中でどのように立ち現れるかを生活の場からアートの世界まで見渡したレポート.文字の生態学.」
  • アーサー・O・ラヴジョイ[内藤健二訳]『存在の大いなる連鎖
    (2013年5月10日刊行,筑摩書房ちくま学芸文庫・ラ-10-1],東京,643+ ix pp., 本体価格1,700円,ISBN:9784480095367)※コメント「動植物はもちろん鉱物にいたるまでの自然界の事物を直線的に配置する “存在の連鎖” という観念は,2000年前のギリシャ時代から連綿と続く可視化の方策だった.その “存在の連鎖” の思想史を詳述する本書が文庫版で手にできるとはいい時代になったものだ.」
  • パオロ・ロッシ清瀬卓訳]『普遍の鍵〈新装版〉』(2012年8月,国書刊行会, 東京, ISBN:9784336055330)※コメント「中世思想史における “記憶術” は情報の可視化と検索の長い歴史に一時代を画した技法の体系だった.本書は,ともすれば非科学的な “暗黒の中世” の遺物のように誤解されているこの “記憶術” の実相を追究した名著である.」
  • フランセス・A・イエイツ[玉泉八州男監訳]『記憶術』(1993年6月,水声社, 東京, ISBN:4891762527)※コメント「本書を読めば,かつて中世で大きく開花した魔術的な “記憶術” の末裔が現在のインフォグラフィックスにもつながっていることがわかるだろう.大量かつ複雑な情報をいかに効率的に視覚化し,ユーザーである人間に役立てることができるかという問題は昔も今も変わりがない.」
  • Hartmut Bohnacker, Benedikt Groß, Julia Laub 著| Claudius Lazzeroni 編[深津貴之・国分宏樹監修|安藤幸央・杉本達應・澤村正樹訳]『Generative Design ― Processingで切り拓く、デザインの新たな地平』(2016年2月, ビー・エヌ・エヌ新社, 東京, 486 pp., 本体価格9,800円, ISBN:9784802510134)※コメント:「この巨大な本は,所収されている具体的な事例を見るだけでも十分に楽しいが,効果的なヴィジュアル・グラフィクスをどのようにプログラムするのかについて詳細に説明されている.」
  • 三中信宏(文)・杉山久仁彦(図版)『系統樹曼荼羅:チェイン・ツリー・ネットワーク』(2012年11月, NTT出版, 東京, 255 pp, 本体価格2,800円, ISBN:9784757142633)※コメント「古今東西にわたって広く分布してきた系統樹ダイアグラム(チェイン,ツリー,ネットワーク)を蒐集し,分野の壁を超えて共通に用いられてきた可視化ツールとしてのダイアグラムの多様性と類似性を考察した図版集.」
  • ホルスト・ブレーデカンプ[濱中春訳]『ダーウィンの珊瑚:進化論のダイアグラムと博物学』(2010年12月,法政大学出版局[叢書ウニベルシタス949],東京,16 color plates + iv+185 pp., 本体価格2,900円,ISBN:9784588009495)※コメント「進化学者チャールズ・ダーウィンが生物の系統発生を視覚化するために用いた “系統樹” の図像学史をたどるめずらしい本.ダーウィンが描いた系統樹は現実の海にいる “珊瑚” がモデルだったという著者は提案する.」
  • 杉浦貴美子『地図趣味。』(2016年8月,洋泉社,東京, 143 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784800309617)※コメント:「地図インフォグラフィクスへの好奇心と偏愛的オブセッションが随所で炸裂するとてもいい本.古今東西の歴史的な地図がいろいろ見られるのも楽しいが,実際に歩いてみたり,マップ情報を〈カシミール3D〉で編集・可視化したりと著者の地図フェチぶりは相当な重症とみた.」
  • エルンスト・ヘッケル著[小畠郁生監修|戸田裕之訳]『新装版・生物の驚異的な形』(2014年8月,河出書房新社,141 pp., 本体価格2,800円,ISBN:9784309253046)※コメント「生物とその多様性をあふれんばかりの画才をもって描き切った19世紀の進化系統学者エルンスト・ヘッケル.彼の作品は生物学だけでなく,アート・建築・グラフィックデザインなど広範な影響を及ぼした.」
  • パトリス・ブシャー総編集[丸山宗利日本語版監修]『世界甲虫大図鑑』(2016年5月,東京書籍,東京, 655 pp., 本体価格6,500円, ISBN:9784487809301)※コメント:「ずっしり重くて巨大なフルカラー甲虫図鑑.650ページ超.とにかく美麗すぎる写真の数々.」
  • 原康史インフォグラフィックスの潮流:情報と図解の近代史』(2016年2月,誠文堂新光社,東京, 174 pp., 本体価格2,800円, ISBN:9784416115497)※コメント:「インフォグラフィクスの現在を鳥瞰する本.その歴史から始まり現代にいたる道のりがよくまとめられている.」
  • 杉浦康平時間のヒダ、空間のシワ…[時間地図]の試み:杉浦康平ダイアグラム・コレクション』(2014年10月,鹿島出版会,東京,101 pp., ISBN:9784306046061)※コメント「半世紀前の1960年代から現在まで,日本のグラフィック・デザイン界を先導してきた杉浦康平によるダイアグラム論集成.時間軸を中心にさまざまな情報とデータを視覚化する数々の提案.可視化ツールとしてのダイアグラムの大舞台.」
  • 杉浦康平松岡正剛(編)『ヴィジュアルコミュニケーション』(1976年12月,講談社[世界のグラフィックデザイン・1],東京,239 pp.)※コメント:「日本におけるインフォグラフィクス論の先駆となる書物.」