『東西ベルリン動物園大戦争』

ヤン・モーンハウプト[黒鳥英俊監修|赤坂桃子訳]
(2018年9月18日刊行,CCCメディアハウス,東京, 374 pp., 本体価格2,600円, ISBN:9784484181080版元ページ|監訳者記事

第二次世界大戦前から東西分断時代にいたるドイツを「動物園」というユニークな視点から見た興味が湧きそうな本. この9月に翻訳出版されていたことをうかつにも見過ごしていた.原書:Jan Mohnhaupt『Der Zoo der Anderen: Als die Stasi ihr Herz für Brillenbären entdeckte & Helmut Schmidt mit Pandas nachrüstete』(2017年2月刊行, Carl Hanser Verlag, München, ISBN:9783446255043版元ページ).

旧東独の国家秘密警察シュタージが本書の一方の主役なので,原題は『善き人のための動物園:メガネグマを配備した東独のシュタージとパンダで軍拡した西独のヘルムート・シュミット』とでも訳せるのかな.でも,それだと映画〈善き人のためのソナタ(Das Leben der Anderen)〉を知らない日本人読者にはきっと通じないにちがいないので,『東西ベルリン動物園大戦争』という翻訳書名は意外にいいかもしれない.

東西を隔てる “壁” によって分断されていた冷戦時代の東ドイツでシュタージが当時の科学研究に与えた影響については,ヴィリ・ヘニックの伝記にもくわしく書かれている(→ ワタクシの書評).本書『東西ベルリン動物園大戦争』では,同時代の東西ドイツの動物園を舞台になっている点で興味を惹かれる.

なお訳書では原書にはある文献リストと索引がすべて省略されている.かなり残念.文献資料的価値はほぼゼロになってしまった.というわけで,Amazon.de に独語原書を発注した.

【目次】
地図 1
主な登場人物 2

 

プロローグ――動物園人 11
第1章 戦争とワニの尻尾のスープ 21
第2章 動物園フィーバー 57
第3章 第四の男 95
第4章 パンダと国家の威信 131
第5章 狩猟家と収集家 171
第6章 大きな計画、小さな魚 223
第7章 一つの島に二頭のクマ 253
第8章 灰色の巨人、倒れる 293
エピローグ――古い男たちと新しい時代 335
その後 349

 

謝辞 359

 

 
訳者あとがき 362
監修者解説 366