『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』

ウリカ・セーゲルストローレ

(2005年2月23日刊行,みすず書房,上巻:ISBN:4622071312 / 下巻:ISBN:4622071320

→書評:



社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』の訳者あとがきで,日本の現代進化学史における批判勢力としての“構造主義生物学”に言及している:




柴谷篤弘池田清彦らによって,構造主義生物学の立場からの社会生物学批判・ネオダーウィン主義批判が精力的になされたことは明記しておくべきであろう.池田らの批判について個々で論じる余裕はないが,私見によれば,哲学的な議論は別にして,批判の実質はルウォンティンおよびグールドの適応万能主義批判に通じるものであり,社会生物学者の側からの応答もそれに準じるものであろう.(p. 724)



私見によれば,“構造主義生物学”という単独の学問的「実体」はなく,固有名詞付きの〈〜の構造主義生物学〉なるものがあるだけだ.だから,あたかも“派”としての“構造主義生物学”が批判勢力として存在していたと考えるのはまちがっている.むしろ,批判したい人たちが近くに集まっているように見えたとみなすべきなのだろうとぼくは考える(「星座」みたいなもの).批判派という点についてのみ共通点を見いだそうとするのは,はっきり言って,まちがい.

生態学会大阪大会のおりに,「セーゲルストローレ本の“日本版”みたいな本が必要ですね」というさりげない会話が交わされたこともメモっておこう.