『文系と理系はなぜ分かれたのか』(第1章末尾抜書き)

隠岐さや香
(2018年8月24日刊行,星海社星海社新書・137],東京, 253 pp., 本体価格980円, ISBN:9784065123843目次版元ページ

第1章「文系と理系はいつどのように分かれたか?—— 欧米諸国の場合」(pp. 15-78)の末尾(pp. 73-75)に書かれていることは,とても興味深く,また本書全体にとっても大きな意味がある部分だとワタクシは思う:

「確かに、「人文社会」「理工医」の二つに分ける区別は絶対ではない。しかし、諸学は一つとも言えない。そこには少なくとも、二つの違う立場が存在するのではないか、と思うからです。」(p. 73)

「思い出して欲しいのですが、この章ではかなりページを割いて、自然科学と人文社会科学の諸分野が、それぞれの固有の対象を見つけて、宗教や王権から自律していく経緯を描きました。そして、その自律には、主に二つの異なる方向性がみられます。」(pp. 73-74)

「一つは「神の似姿である人間を世界の中心とみなす自然観」から距離を取るという方向性です。それは、人間の五感や感情からなるべく距離を置き、器具や数字、万人が共有できる形式的な論理を使うことで可能になりました。文字通り、「客観的に」物事を捉えようとしたわけです。その結果、たとえば地球は宇宙の中心ではないし、人間は他の動物に対して特別な存在でもないという自然観につながりました。」(p. 74)

「もう一つは、神(と王)を中心とする世界秩序から離れ、人間中心の世界秩序を追い求める方向性です。すなわち、天上の権威に判断の根拠を求めるのではなく、人間の基準でものごとの善し悪しを捉え、人間の力で主体的に状況を変えようとするのです。その結果、たとえば、この世の身分秩序を「神が定めたもの」と受け入れるのではなく、対等な人間同士が社会の中でどう振る舞うべきかをさぐったり、人間にとっての価値や意味を考えたりするための諸分野がうまれました。」(p. 74)

「すなわち、前者にとって、「人間」はバイアスの源ですが、後者にとって「人間」は価値の源泉であるわけです。」(p. 74)

「断言はできませんが、どちらかといえば、前者は理工系、後者は人文社会系に特徴的な態度といえるでしょう。もちろん、経済学の幾つかの学派や、医学のように、どちらともいえない分野もあります。」(p. 75)

「いずれにせよ、両者は共に何らかの権威から自律することで近代的な学問となったのですが、別の方向を向いています。そこには、完全には融合しきれない、違いが残り続けるのではないでしょうか。」(p. 75)

『文系と理系はなぜ分かれたのか』(試し読み)

隠岐さや香
(2018年8月24日刊行,星海社星海社新書・137],東京, 253 pp., 本体価格980円, ISBN:9784065123843目次版元ページ

「はじめに」(pp. 1-6)から第1章「文系と理系はいつどのように分かれたか?—— 欧米諸国の場合」(pp. 15-78)までまるまる “試し読み” できる(→ ジセダイ「文系と理系はなぜ分かれたのか - 星海社新書」).もちろん,ワタクシはもう買ってしまったので,pdf をわざわざダウンロードする必要はないんですけど.

「はてなダイアリー」から「はてなブログ」へ(引越のお知らせ)

旧本録〈leeswijzer: boeken annex van dagboek〉 ※2005年1月9日から2018年9月6日まで
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新本録〈leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek〉 ※2018年9月6日以降〜

先月末にアナウンスされた:はてなダイアリー日記2019年春「はてなダイアリー」終了のお知らせと「はてなブログ」への移行のお願い」(2018年8月30日)をふまえて,ワタクシも長年お世話になったはてなダイアリーからの卒業を決意しました.とりあえず,はてなダイアリーで十年余り続けてきた旧本録〈leeswijzer: boeken annex van dagboek〉 http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/ を同名の新しいはてなブログ〈leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek〉 https://leeswijzer.hatenadiary.com/ に移行する作業を開始したことをお知らせします.2005年1月の開設以来,旧本録には6,200あまりもの項目が堆積しています.しかも,いまサイト移行希望者が殺到しているようで,すべての項目の移行完了までには数日かかるかもしれないとのはてな運営サイドからの連絡がありました.とりあえず,この新ブログをオープンしますので,今後ともよろしくよろしく.


はてな引越日録 — 経時的に】

  • 2018年9月5日(水)新本録の開設完了.旧本録からの移行開始.
  • 2018年9月6日(木)6:00の時点で2015年1月以降の過去ログ5年分「1,406項目」は移行完了しましたが,それ以前の約10年分の引っ越しはまだこれからのようです.
  • 2018年9月6日(木)18:00の時点で丸ごと引越しはまったく進捗していない.よほど混雑しているのだろーか.ガマン比べみたいなものかも.
  • 2018年9月6日(木)18:00〜7日(金)6:00 — 進捗なし.画面表示はずーっと下記のまま固まっている:

インポートが進行中です。しばらくお待ちください。
なお、この画面を閉じてもインポートは進行します。
ただいまインポートが集中しており、記事の件数によっては完了するまでに数日以上かかる場合があります。

  • 2018年9月7日(金)6:00〜9:00 — 2014年12月〜2011年9月分の計「1,308項目」の移行完了.ここまでの累計で「2,714項目」が引越した.しかし,まだ先は長い,長過ぎる……
  • 2018年9月7日(金)9:00〜15:00 — 2011年9月〜2010年3月分の計「666項目」の移行完了.ここまでの累計で「3,380項目」が引越した.
  • 2018年9月7日(金)15:00〜21:00 — まったく進捗なし.
  • 2018年9月7日(金)21:00〜9月8日(土)6:00 — 2010年3月分〜2006年4月分の計「1,919項目」の移行完了.ここまでの累計で「5,299項目」が引越した.
  • 2018年9月8日(土)6:00〜8:00 — 2006年4月〜2005年6月分の計「534項目」の移行完了.ここまでの累計で「5,833項目」が引越した.もうすぐ終わりだ.
  • 2018年9月8日(土)8:00〜10:00 — 2005年6月〜5月分の計「84項目」の移行完了.ここまでの累計で「5,917項目」が引越した.
  • 2018年9月8日(土)10:00〜11:00 — 2005年5月〜4月分の計「69項目」の移行完了.ここまでの累計で「5,986項目」が引越した.
  • 2018年9月8日(土)11:00〜11:30 — 2005年4月〜1月分の計「274項目」の移行完了.以上をもって全過去ログの累計「6,260項目」がすべて引越完了.まる三日間かかりました.
  • 過去ログ移行が完了したので,続いて「はてなブックマーク」の移行完了.
  • 最後に,旧はてなダイアリー記事の「リダイレクト」設定完了.これにてインポート作業は一件落着とあいなった.
  • 新・本録への「リダイレクト」が有効になったので,旧・本録〈leeswijzer: boeken annex van dagboek〉 http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/ は不可視化された.

『ムカシのミライ』

阿子島香・溝口孝司(監修)
(2018年10月刊行予定,勁草書房,東京, 本体価格2,700円, ISBN:9784326248490版元ページ

一昨年に開催された下記イベントを踏まえた論文集:〈ムカシのミライ:プロセス考古学×ポストプロセス考古学〉【日時】2016年6月5日(日)11:00~14:30【場所】一ツ橋・学術総合センター特別会議室(千代田区一橋)【演者】阿子島香・溝口孝司・中尾央.

【目次】
はじめに(井原泰雄) i
第1章 考古学理論との対峙──プロセス考古学とポストプロセス考古学をなぜ議論するのか(中尾央) 1
第2章 [対談]ムカシのミライ:プロセス考古学×ポストプロセス考古学(阿子島香・溝口孝司・中尾央|司会:菅野智則) 21
第3章 プロセス学派とポストプロセス学派の相克をめぐる人類学的布置(大西秀之) 125
第4章 歴史科学としての現代考古学の成立──研究者ネットワークと周辺分野との関係について(三中信宏) 151
第5章 埋蔵文化財にかかわる日々の業務の中で(菅野智則) 169
第6章 プロセス考古学の現在から日本考古学の未来へ(阿子島香) 177
第7章 ポストプロセス考古学フェイズにおける社会考古学──リコメント、あるいは同時代的状況の中で適切に体系的に「温故知新」を行うために(溝口孝司) 197
あとがき(田村光平・有松唯) 233
索引
執筆者紹介

『絶やすな!絶品町グルメ 高崎絶メシリスト』

一般社団法人高崎観光協会
(2018年7月刊行,一般社団法人高崎観光協会,高崎, 201 pp., 本体価格1,389円, ISBN:9784938526542版元ページ

高崎から本日着便.かの〈高崎絶メシリスト〉の書籍化.真正グンマー必携の一冊.高崎ど真ん中の〈一二三食堂〉も絶滅危惧?(まさか).榛名山中腹の〈魚籠屋〉が endangered なのはわからないでもない.ワタクシ個人的には八千代町の高高前にかつてあった「栗まん屋」を復活してほしいな.ヨロシク.

『投壜通信』

山本貴光
(2018年9月7日刊行,本の雑誌社,東京, 446 pp., 本体価格2,300円, ISBN:9784860114183版元ページ

【目次】
はじめに 1
第一章 本で世界をマッピング〈テーマ別ブックガイド〉 7
第二章 日々の泡 117
第三章 読むことは書くこと 175
おわりに 315


附録 本との遊び方 321
 マジック・アルゴリアリズム宣言 ver.0.32 323
 『ルールズ・オブ・プレイ』攻略法 349
 バベルの図書館司書便り —— ある一カ月の記録 399
タイトル索引 [440-433]
人名索引 [445-441]
初出一覧 446

『心の進化を解明する:バクテリアからバッハへ』

ダニエル・C・デネット[木島泰三訳]

(2018年7月18日刊行,青土社,東京, 2 color plates + 712 + 34 pp., 本体価格4,200円, ISBN:9784791770755目次版元ページ

書評記事を日本経済新聞に書いた:評者・三中信宏人間が文化をつくれた理由」(2018年9月1日).「ダーウィン空間」を行ったり来たりする物語.

『文系と理系はなぜ分かれたのか』

隠岐さや香
(2018年8月24日刊行,星海社星海社新書・137],東京, 253 pp., 本体価格980円, ISBN:9784065123843版元ページ

参考:Togetter -「文系と理系はなぜ分かれたのか」.

【目次】

はじめに 3

第1章 文系と理系はいつどのように分かれたか?—— 欧米諸国の場合 15

 中世の大学と学問観 16
 「理系」の黎明期とアカデミーの誕生、そして衰退(一七〜一八世紀末) 22
 「文系」成立前夜 —— 人文社会科学の黎明期(一六世紀末〜一九世紀前半) 35
 近代大学の成立と自然科学・人文社会科学の制度化(一九世紀以降) 51
 「二つの文化」はあるのか? 71

第2章 日本の近代化と文系・理系 79

 東アジアにおける学問体系 —— 「道」と「学」・「術」 80
 「蘭学」の経験と江戸時代日本 84
 「窮理」としての科学・技術 89
 「道」としての西洋 94
 「文」と「理」観の形成 —— 学問制度と官僚制度 97
 戦争の足音と苦悩する人文社会科学 102
 「科学技術立国」のままでよいのか 107

第3章 産業界と文系・理系 115

 文理選択と新卒学生の就活 116
 文系学部の大学教育は就活で評価されない? 118
 理系の「専門性」はどこまで企業で重視されるか? 121
 理工系博士と企業とのミスマッチ 123
 欧米企業と博士号取得者 126
 アカデミック・キャピタリズムと「文系不要」論争 129
 「儲かる理工系」思想の源泉 —— イノベーション政策1.0 134
 「儲かる理工系」の実現化 —— イノベーション政策2.0 137
 理工系博士の活躍できる国,できない国 142
 高学歴競争の過熱と不平等の拡大 —— イノベーション政策2.0の負の遺産 145
 イノベーション政策3.0と人文社会科学系 —— SDGsとSTEAM 149

第4章 ジェンダーと文系・理系 155

 日本は進路選択の男女差が大きい国である 156
 分野適性と性差、困難な問い 159
 知能テストや学力テストからみえてくること —— 数学と科学の場合 162
 「生まれつきの才能」イメージの危険性 167
 認知機能の性差とホルモン・脳・環境 171
 男性はどのように理工系に引き寄せられ,女性はどのようにそこから遠ざかるのか —— ジェンダー役割とステレオタイプ 176
 ジェンダーステレオタイプ(思い込み)と研究職の世界での差別 180
 ジェンダー格差はなぜ問題視されるのか 182
 男性と言語リテラシー問題? 187

第5章 研究の「学際化」と文系・理系 195

 文系・理系の区別は消えていくのか? 196
 学際化と教育 —— 文系・理系を区別した教育は古い? 197
 「リベラルアーツ教育」と教養への回帰 201
 研究の世界では何が起きているか —— 学際化と分類概念の動揺 204
 「学際化」と学問「統一」の欲望 207
 諸分野はどのように異なっているか —— 方法と分類 211
 社会科学の自然主義化 —— 試みと論争 221
 学際的分野と不確実性、政治性 226
 複数の文化アプローチ —— 集合知としての学問 234
 変容する科学とその行方 237

おわりに 246