「本を読むということ」

行く先々で知り合いに会うたびに「よくあれほど本を読めますね」と言われることがある.でもヘビーな読書家と呼ばれる人は世の中にたくさんいるわけで,本を読むことそれ自体に何かしらの価値を置く必要はないと思う.どのようなジャンルの本であるかによっても読書行為のありようはちがってくるだろうし,読書に関してみだりな一般論を開陳してもしかたがない.



ぼくに関して言えば,効率的に本を読むためには「一定速度でページをめくること」に尽きる.加速をつけて読み飛ばしたり,ゆっくり読み込んだりしないで,定速で着実に読み進む.ただし,定速は低速ではない.ふつうに書かれてある文章ならば,1時間で100〜150ページという定速読書が基本ペースとなる.千ページを越えるような大著であってもこの原則には変わりがない.読書速度×読書時間=総頁数によりすべては解決される.新しいページをめくったらできるだけいっぺんに多くの行を視野に入れて写真を撮るように「見て」しまう(ひょっとしたら「読んで」いないのかもしれない).著者に関する事前知識があれば,すべての単語に眼を通すまでもなく,キーワードを節点として“スプライン近似”しながら読み進むというワザも[たまには]使える.



もちろん,書評を前提とする読書の場合は,1)本への書き込み(marginalia);2)論点のメモ書き(jottings);3)付箋紙の貼付け(Post-It)という「3点セット」は不可欠だ.もともと,読んで覚えるという習慣(能力?)がぼくには欠落しているので,記憶にとどめるためにはひたすら「書きこみ」をする必要がある.昨年から習慣化してしまった「歩き読み」でも携帯筆記用具を持ち歩いている.



要するに,「定速読書」と「書きこみ」がぼくの場合の本読みの秘訣ということになるのかな.