『The Nature of Scientific Evidence: Statistical, Philosophical, and Empirical Considerations』

M. L. Taper and S. R. Lele (eds.)

(2004年,The University of Chicago Press, ISBN:0226789578



常磐線高崎線での車中読書.まずは「Part 1: Scientific process」から.統計学の基本的な「ものの考え方」を概観する.知っている人にとっては必修項目ばかりなので,pedagogical な目的での講義アイテムを確認をする上で役に立つ.

たとえば,第1章「A brief tour of statistical concepts (Nicholas Lewin-Koh, Mark L. Taper, and Subhash R. Lele) 」は,Ronald A. Fisher の性比理論をテストするという課題を提示し(Guinea pig のデータ),それを〈Fisher's P-value test〉,〈Neyman-Pearson test〉,〈Bayesian test〉,そして〈尤度比検定〉という4つの観点からのテスト結果を導出する.たとえまったく同一のデータに対して統計的検定をする場合でも,テストの方法が異なれば結果がまったく異なるという状況を読者に確認させる.具体的にいえば,帰無仮説 H0:「性比0.5」と対立仮説 H1:「性比0.45」を設定したとき,与えられたデータのもとで,Fisher test と Neyman-Pearson test はH1を受容するが,Bayesian test と尤度比検定は逆にH0を受容する.

本書全体を通じての基本的主張のひとつは,統計学的な「ものの考え方」として,Fisher test や Neyman-Pearson test のような「decision making」な姿勢でもなく,また Bayesianism のような「belief-oriented」なスタンスでもない,第三の「evidence-based」なアプローチを推進しようという点にある.あとに続く章では,証拠(evidence)を踏まえた尤度基準のもとでの仮説(モデル)の相対的サポートという考え方をめぐって論議が交わされるのだろう.