『中谷宇吉郎随筆集』

中谷宇吉郎

(1988年9月刊行,岩波文庫・緑(31)-124-1,ISBN:4003112415



中谷治宇二郎〉のこと —— 哨戒地点(5月25日付)で言及されているが,中谷宇吉郎のこのエッセイ集に所収されている「茶碗の曲線」について,しばし探索.このエッセイの主人公は,宇吉郎の実弟である考古学者・中谷治宇二郎(1902〜1936)だ.ウェブ公開されている東大総合研究博物館ニュースの伝記記事「考古学者中谷治宇二郎の記録」(西秋良宏)がとても参考になる:




「土器分析への数量的手法の導入、形式・型式・様式という今日の日本考古学がなお用いる分類学用語体系の整備は特筆される業績である。」



とすると,日本の考古学で使われてきた「型式学(Typologie)」という訳語も治宇二郎がルーツなのかな?

形態測定学の流れでいうと,1920〜30年代といえば,D'Arcy Thompson のデカルト変換格子理論(1910年代)か,あるいは Julian Huxley の相対成長理論(1930年代)くらいしか解析ツールがなかった時代だ.治宇二郎がいったいどのような“形態測定学”に関心を示したのか,出典を見ていないので今はなんとも言えない.

— 渡仏した宇吉郎・治宇二郎兄弟は,パリでやはり留学していた数学者・岡潔と親交を深めたと言う:高瀬正仁評伝 岡潔<花の章>』(2004年4月20日刊行,海鳴社ISBN:4875252188).