『オランダ東インド会社』

永積昭

(2000年11月10日刊行,講談社学術文庫1454,ISBN:4-06-159454-0

【書評】

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17〜18世紀の東南アジアのスパイス戦争の顛末

オランダ船リーフデ号が九州に漂着した2年後の1602年に、本書の主役であるオランダ東インド会社(VOC)は株式会社として発足した。東インドすなわち現在の東南アジアは、当時すでにナツメグや胡椒など西欧諸国に巨万の富をもたらす香辛料の原産地として、ポルトガル・イギリス・スペインを交えたスパイス戦争が16世紀以降激化していた。

 

東南アジアのいたるところに建設された港市政体−オランダ東インド会社が200年にわたって根をおろしたジャワ島のバタヴィア(現:ジャカルタ)もその一つである−は、複雑に相互対立しながら、しかも当地の政治勢力と結びつきながら長期にわたるスパイス戦争を戦い続けた。本書は、オランダおよびインドネシアの原資料をひもときながら、この「戦争」の顛末を明らかにしようとする。

 

1971年初版の文庫版復刻である。解説者は歴史叙述のスタイルが当時と今では変わってきたと述べているが、内容の古さは私には感じられない。むしろ、オランダ本国を取り巻く政治情勢が、遠隔の東南アジアでのスパイス戦争にどのように反映されてきたのかを詳細に解読しようとする本書は洋の東西をまたぐスケールの大きさを示している。

 

三中信宏(29/November/2000)

【目次】
まえがき 3
目次 9
1.香料への道15
2.V・O・Cの誕生 45
3.征服者クーン 72
4.日本貿易 112
5.陸にあがる 141
6.塗りこめた首 172
7.ジャワの支配 204
8.落日 229
むすび 247
参考文献 251
解説(弘末雅士) 253
年表 269
索引 288