『讀書間適』

富士川英郎

(1991年11月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)

第I部は「菅茶山」論.第II部では,富士川游と森鴎外との関わりについて,その経歴や仕事を比較しながら詳しく論じている.両者は同時代に医学関連ジャーナリズムに関わりを持っていた.英米系の医学につながる『東京醫事新誌』を編集したのが森鴎外であり,一方,ドイツ医学寄りの『中外醫事新報』を編集したのが富士川游だった.『中外醫事新報』は,その後,『日本醫史學雜誌』と誌名を変えて現在まで続いているという.



興味深いのは,2001年に不二出版から復刻された,富士川游の編集による雑誌『人性』だ.エルンスト・ヘッケルがイェナ大学で活躍していたちょうどその時期に留学した富士川游は,当時のヘッケル流の進化論や一元論をそのまま持ち帰ってきたという.『人性』にはそういう記事がたくさん載っているそうだ.



『讀書〜』エッセイ集の巻が進むとともに,物故した知人や遠い時代の追憶がだんだん多くなるのは当然のことだろう.さらさらした文章.