〈「文化系統学への招待」ブックフェア〉

  ジュンク堂書店池袋本店(2012年9月下旬〜10月下旬開催)

   → ブックリスト [pdf: 4 pp.]|ブックリスト(補遺)[pdf: 2 pp.]

文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』を掲げるリアル「ジュンク堂」でのブックフェアが終了したので,リストアップした本の一覧を公開します.「ブックリスト」の内容は以下の通り([ ]紹介文責):

  1. 中尾央・三中信宏(編著)2012.文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る勁草書房.[三中]生物の進化学・系統学が文化とその構築物のたどった歴史に対してどのように新たな光を当てることができるのか.日本初の論文集.
  2. 三中信宏・杉山久仁彦 2012.系統樹曼荼羅:チェイン・ツリー・ネットワークNTT出版[三中]系統樹という観念もまた進化するオブジェクトである.古今東西,分野をまたいでいたるところに出現する「系統樹」とその図像史学的背景を豊富なカラー図版によって解説する.
  3. カール・ジンマー 2004. 「進化」大全 − ダーウィン思想:史上最大の科学革命. 光文社.[三中]ダーウィン進化論が与えたインパクトを豊富なカラー図版とともに一般読者に伝える.
  4. カール・ジンマー 2012. 進化:生命のたどる道. 岩波書店[三中]現代の進化生物学の全貌を数多くのカラー写真や図表によって平易に解説した教科書.
  5. ナイルズ・エルドリッジ 2012. ダーウィンと現代:「生命の樹」の発見. 麗澤大学出版会. [編集部]ダーウィン生誕200年,『種の起源』出版150年を記念して2009年原著刊行.系統樹はこの人抜きに語れない.たくさんのカラー写真や図像とともに.
  6. 三中信宏 1997. 生物系統学. 東京大学出版会[中尾]いかにして分類するか.生物体系学を巡る論争史をふまえた上で,過去を推定する生物系統学の手法を解説する.
  7. 三中信宏 2009. 分類思考の世界:なぜヒトは万物を「種」に分けるのか. 講談社現代新書2014.[中尾]「分けること」に取り憑かれてきたヒトの物語.分類とは「分けたがる」ヒトの心ゆえに行われる作業である.
  8. 三中信宏 2010. 進化思考の世界:ヒトは森羅万象をどう体系化するかNHK Books 1164.[中尾]過去から現在にいたる「進化」の過程を明らかにしようとする「進化思考」の進化を考察した本.進化学もまた進化する.
  9. カルロ・ギンズブルグ 2003. 歴史を逆なでに読む. みすず書房[三中]かぎられた証拠からいかにして歴史を推定するか.メタヒストリーではない歴史学がここにある.
  10. ヴォルフ・レペニース[山村直資訳] 1992. 自然誌の終焉:18世紀と19世紀の諸科学における文化的自明概念の変遷. 法政大学出版局.[三中]博物学における分類学と系統学のルーツと相互関係を明らかにする.自然誌は重力崩壊を起こして自然史となった.
  11. エリオット・ソーバー三中信宏訳] 2010. 過去を復元する:最節約原理・進化論・推論. 勁草書房[三中]系統樹を復元することの科学哲学的問題を掘り下げた本.生物学・科学哲学・統計学の境界領域を突き進む.
  12. 三中信宏(編)2012. 進化が語る 現在・過去・未来. 別冊日経サイエンス・No. 185.[編集部]マイアやジンマーの記事を筆頭に,茂木×三中のアヤしさ漂う対談等々と盛りだくさん.現代進化学を見わたすために欠かせない歴史的文脈をぜひ.
  13. ジョン・C・エイビス[西田睦・武藤文人監訳]2008. 生物系統地理学:種の進化を探る. 東京大学出版会.[三中]生物が時空的にどのように変化するかを分子データから論じる系統地理学.その手法は現在では言語進化にも適用されつつある.
  14. レイノルズ,L. D.,ウィルソン,N. G. 1996. 古典の継承者たち:ギリシャ・ラテン語テクストの伝承にみる文化史. 国文社[三中]写本がどのようにしてつくられ,後世に伝承されてきたのかを西洋古典を例にとって詳述する.
  15. 橋本不美男 2008. 原典をめざして:古典文学のための書誌. 笠間書院.[三中]古文書がどのように時代を越えて伝承されてきたかを具体的に論じる.写本系統学の基礎知識.
  16. 池田亀鑑 1991. 古典学入門岩波書店岩波文庫 33-184-1),242 pp.[三中]写本復元に厳密な文化系統学的方法を導入しようとした著者が一般向けに書いた本.
  17. 笹原宏之 2006. 日本の漢字. 岩波新書(新赤版)991.[三中]文化構築物としての「字」がたどる時空的変遷を日本の「国字」を題材として描きだす.
  18. 屋名池誠 2003. 横書き登場:日本語表記の近代. 岩波新書・新赤版863.[三中]日本語の縦書き・横書きの表記変遷を論じた本.文字テキストを越えた「表記書式」もまた時代とともに発生し,そして進化する.
  19. 笹原宏之 2007. 国字の位相と展開. 三省堂.[三中]日本で独自に生じた「国字」を網羅的に調べあげた百科事典.生き物としての「字」に光を当てる.
  20. 松本修 1993. 全国アホ・バカ分布考:はるかなる言葉の旅路. 太田出版/1996. 新潮文庫.[三中]「アホ/バカ」という身近な言葉の方言分布を網羅的に調べてわかる言葉の系統地理学.方言学は文化系統学だった.
  21. 松木武彦 2009. 進化考古学の大冒険.新潮選書.[中尾]モノから心はわかるのか.遺された文化の進化からヒトの心の進化を探る試みである進化考古学の本.
  22. 伊藤俊治 2005. 唐草抄:装飾文様生命誌. 牛若丸/星雲社.[三中]古今東西,さまざまな書物や芸術作品そして建築にも出現する「唐草模様」を文化系統学の観点から読み直す.カラーの唐草模様系統樹は必見.
  23. 日置昌一 1990. 日本系譜綜覧. 講談社学術文庫[三中]天皇家から茶道・華道までありとあらゆる「系図」が集められている.日本人がいかに「系図好き」かがわかる好著.
  24. 杉浦康平(編著)2005. アジアの本・文字・デザイン. トランスアート.[三中]アジア地域における「生命の樹」を考察してきた著者が著した本.書物の装幀と文字を通して文化史を見る快楽.
  25. 岩崎信也 2003. 蕎麦屋の系図. 光文社新書[三中]食文化のひとつとしての「蕎麦」はその作り手(蕎麦屋)とともに文化伝承する.身近な生活の意外なところにも系統樹は生えている.
  26. とり・みき 2007. 街角のオジギビト. 筑摩書房.[三中]炎天でも酷寒でも街中の工事現場に立ち続ける「オジギビト」の誕生とその進化を論じた本書は,路上観察学と文化系統学の予想しないコラボレーション.
  27. 沢田佳久 2012.醤油鯛.アストラ[三中]弁当に入っている「醤油鯛」も日々進化する.文化進化のみごとな実例を豊富な写真とともに.
  28. エルンスト・ヘッケル 2009. 生物の驚異的な形. 河出書房新社.[三中]ドイツにダーウィン進化論を上陸させたヘッケルは,たぐいまれな画才に恵まれ,魅力的な博物彩色図譜をたくさん残した.
  29. ホルスト・ブレーデカンプ 2010. ダーウィンの珊瑚:進化論のダイアグラムと博物学. 法政大学出版局.[三中]ダーウィンをはじめ多くの生物学者が描いた「系統樹」を図像学的に解析した本.ツリーは時代を越えていかにして伝えられたが見えてくる.
  30. 田中純 2010. イメージの自然史:天使から貝殻まで. 羽鳥書店.[三中]「ことば」とは別の次元で「図像」がもつイメージ・パワーをさまざまな資料を駆使してダイナミックに描いた図像文化本.図像的転回は本書から.
  31. 小松和彦 2008. 百鬼夜行絵巻の謎集英社新書ヴィジュアル版012V.[三中]何世紀にもわたって伝承されてきた百鬼夜行絵巻の変遷を論じる.写本系統学の具体例として興味深い.
  32. 〓之林[「〓」=“革”+“斤”] 1998. 中国の生命の樹. 言叢社.[三中]広大な中国に広く伝えられてきたさまざまな「生命の樹」を絵画や工芸品そして切り絵などの多くの図版を通して論じた本.
  33. マニュエル・リマ[久保田晃弘監修/奥いずみ訳]2012. ビジュアル・コンプレキシティ:情報パターンのマッピング. ビー・エヌ・エヌ新社.[三中]複雑なデータを視覚化する技法はコンピューター科学の最先端のトピックである.同時に13世紀のライムンドゥス・ルルスの「知識の樹」の甦りでもある.

なお,もうひとつの「ブックリスト(補遺)」は,推薦書名を列挙しただけで,紹介コメントは付けていません.

今後の〈「文化系統学への招待」ブックフェア〉の開催予定も公開しました.