『作曲家・武満徹との日々を語る』

武満浅香

(2006年3月20日刊行,小学館ISBN:4093876134



第1章「出会いの頃」と第2章「無類の映画好き」を読む.え,「ノヴェンバー・ステップス」で琵琶を弾いた“鶴田錦史”って Mr. じゃなくって Ms. だったの?!(知らんかったー) いろいろとエピソードが満載.それに,脚註が親切でとても読みやすい.第3章「デビューからミュージック・トゥデイまで」,第4章「映画にかけた情熱」,第5章「作曲家の日常」,そして第6章「あれから一〇年」.遺された家族からみた作曲家の日々が伝わってくる.全編を通してインタビューから構成された本だが,適切な傍注が付されているので,読者には便利だろう.思わぬ人間関係のつながりを確認できたりして興味深い.たとえば,武満徹の小学校時代についての夫人のコメント:「昔は人望が厚くて,勉強のできる子が級長になりましたから,その副級長の方が,後に東大の解剖学の先生になられた方ですから,……」がある.武満徹級長のもとで副級長をしたという,この「東大の解剖学の先生」とは,『川に生きるイルカたち』(2004年4月16日刊行,東京大学出版会ISBN:4130633236書評・目次)の著者である故・神谷敏郎にほかならない.意外や意外な接点だ.