『変体少女文字の研究:文字の向こうに少女が見える』

山根一眞

(1986年2月5日刊行,講談社ISBN:4062020718



1970年代に出現したとされる“変体少女文字”すなわち“丸文字”についてのドキュメンタリー.新刊ですぐ買って,即読了した形跡あり.“変体少女文字”の「起源」をさまざまな資料やインタビューを通じてつきとめようとした点で(起源年は「昭和49年」と特定されている),この本はとても印象に残っている.しかし,著者の関心は,この書体の「起源」に続く「系譜」そのものではなく,むしろ“変体少女文字”という新しい「書体」の出現をもたらした文化・社会のありさまにあったように記憶している.

書棚の奥から久しぶりに出てきたので,久しぶりに半透明のカバージャケットをめくってみた(石川英輔『大江戸神仙伝』初版本のように,当時はこの“透明スタイル”の装幀がはやっていたらしい).書体の系譜にもう少し重点が置かれていたとしたら,『変体少女文字の研究』はぼくの現代新書の中のしかるべき章に登場していたにちがいない.横書き&シャープペンシル&高速運動などいくつかの点で,“変体少女文字”は“速記文字”に収斂しているように感じられた.