『落語の言語学』

野村雅昭

(2002年6月10日刊行,平凡社ライブラリー435,ISBN:4582764355



元本は1994年5月に平凡社から出された.第1章「落語の言語空間」と第2章「マエオキはなぜあるのか」を読む.120ページほど.マエオキの談話形式の分析もおもしろいのだが,噺家によってマエオキに大きな“変異”があることを知る.それとともに,社会の中での落語の地位の変遷が読み取れるという指摘もある.よほど“対象”が好きじゃなければこういう本は書けないだろう.

第3章「オチの構造」は,落語の“オチ(サゲ)”の分類を論じている.これまで多くの“オチ分類体系”が提唱されてきたが,コンセンサスが得られた分類はいまだにないという.実際,「サゲの分類は一切やめた」と公言してしまった例もあるそうだ.「分類しない」と口にしてしまうところがすごい.内面的にどのように折り合いをつけたのだろうか.そこが気になる.

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