『世界のしゃがみ方:和式/洋式トイレの謎を探る』

ヨコタ村上孝之

(2015年9月15日刊行,平凡社平凡社新書・788],東京, 191 pp., ISBN:9784582857887目次版元ページ

よく知っていそうで,実は未知の世界がトイレを覗けば広がっている.トイレにも奥深い文化史があるのだ.知らない国の知らないタイプのトイレが写真付きで次々に紹介される.日本にしかないと広く思われている「和式トイレ」が実は “グローバル” な様式だったり,「洋式トイレ」は思いの外 “ローカル” であると知ってまずはびっくり.

ワタクシ自身にも,上海郊外の工場の屋外トイレがマジで「仕切りなしの穴だけ」だったのに驚倒したり,ブダペスト中央市場の有料トイレで管理人から「たった20センチのトイレットペーパー」を数フォリント払って買わされて呆然としたトイレ経験がある.

文化構築物としてのトイレがたどってきた系譜はきっとどこかで研究されているはず.トイレの系統樹についてちょっと調べてみたら,やっぱりあった:高野六郎『便所の進化』(1941年,厚生閣[國民科學・2]).この本は国立国会図書館デジタルコレクションで全文公開されている.第2章「便所の分類」,第3章「世界便所風景」,そして第9章「便所の進化」.

さらに:日本下水文化研究会(→ ブログ)なるサイトに行き当たった.その定例研究会「『トイレ異名と総合トイレ学』を聴いて」いわく:「森田氏は、知る人ぞ知るトイレやし尿に関する古書の収集家で、古書店の世界にも顔が広い方です」― 世の中には知らないことが多すぎる.さらに:「黄色の研究」というページも見つかった.トイレにはかぐわしいディープな世界が広がっている.

本書『世界のしゃがみ方』を読んでトイレ学に目覚めた読者は,今夏出版されたばかりの最新刊:日本トイレ協会(編)『トイレ学大事典』(2015年8月,柏書房,本体価格12,000円, ISBN:9784760146086版元ページ )をきっと手にしたくなるにちがいない(ホンマかいな).