『シンタクスと意味:原田信一言語学論文選集』

原田信一(福井直樹編)

(2000年11月10日刊行,大修館書店, ISBN:446921261X



850ページにも達する大きな論文集.日本の若手生成文法学者として“天才”の名をほしいままにした故・原田信一は,高校生の頃からタバコ屋に二階に下宿しつつ,世界中の著名な言語学者たちに別刷請求の手紙を出し続けたという.請求された相手はてっきり日本の新進気鋭の若手教授から届いた論文リクエストだとそろって勘違いしていたそうだ.このエピソードをぼくが読んだのは,彼が1978年に30歳で自殺し,翌年,雑誌『言語』で編まれた彼の追悼特集に載った記事だったと記憶している.大学3年のことだ.もう30年近くも前のことなのに,不思議と記憶から揮発せずに残り続けている話だ.これもまたぼくにとっての“マドレーヌ”の一つであることはまちがいない.

目次