『百鬼夜行絵巻の謎』

小松和彦

(2008年12月21日刊行,集英社集英社新書ヴィジュアル版012V],ISBN:9784087204728版元ページ

【目次】

「百鬼ノ図」(国際日本文化研究センター蔵) 9



はじめに 34

百鬼夜行絵巻」と「妖怪絵巻」/混乱し複雑化する諸伝本/「百鬼ノ図」との衝撃的な出会い/全体の三分の一が黒雲のシーン

第1章 すべては日文研本「百鬼ノ図」から始まった! 53

(1)「百鬼ノ図」と中世 54
祖本は室町時代にさかのぼる可能性/中世的な絵巻がもう一つ —— 京都市立芸術大学蔵「百鬼夜行絵巻」/歴史を書き換える新発見
(2)次々にわかってきたこと 68
もう一つの関連絵巻での発見 —— 大倉集古館蔵「百鬼夜行図」/「模本」「祖本」「原本」とは/中世的性格を物語る資料 —— 東京国立博物館蔵「百鬼夜行図(異本)」/左右を反転させてみると

第2章 「謎」だらけの百鬼夜行絵巻 87

(1)「謎解き」の歴史 88
ミッシングリンクを求めて/幕末・明治の研究から —— 九本の伝本/近衛家の絵巻のゆくえ/詞書をもつ百鬼夜行絵巻 —— 国立国会図書館蔵「百鬼夜行絵巻(す本)」/そのほかの八本
(2)本格的な「謎解き」 109
近年の研究 —— 二つの流れ/「謎解き」の始まり —— 小松茂美氏の研究/大胆な仮説を展開 —— 田中貴子氏の研究/さまざまな問題を提起 —— 小峯和明氏の研究

第3章 百鬼夜行絵巻の全諸本が分類できる 131

(1)四つの系統がある 132
分類基準の四作品 —— 真珠庵本,日文妍本,京都市芸大本,兵庫県歴博本/数多い真珠庵本系統の模本/真珠庵本系統以外の模本群
(2)組み合わせの着眼点 146
四つの折衷型/頭が烏帽子か蛸か/ラストが火の玉か黒雲か/土佐行秀と化物尽し系の妖怪/そのほかのタイプ/真珠庵本の位置づけの修正/図柄検討の重心を移す

第4章 妖怪イメージ誕生の秘密 165

(1)擬人化と妖怪 166
妖怪の三つのカテゴリー/動植物の擬人化 —— 「鳥獣人物戯画」との類似/魚介類の擬人化 —— 「俵藤太絵巻」との類似/中国絵画における擬人化/器物の妖怪 —— 「融通念仏縁起絵巻」/夜叉の四天王との類似
(2)戯画から妖怪へ 192
「妖怪」とは何なのか?/擬人化と妖怪化/器物の獣化・鬼化 —— 「付喪神絵巻」/動物・器物が人に化ける —— 「化物草子」/古い器物たちの復讐の物語/動物・器物の発心と成仏/併存する異界と人間世界 —— 「是害坊絵巻」/妖怪絵巻としての「調度歌合」
(3)妖怪の出現を描く 216
夜のなかの闇/怨霊出現,一天にわかにかき曇る/「羅生門」の鬼出現の描写/鮮烈な印象の黒雲描写/中国絵画からの影響


おわりに 233

系統樹の書き換えと中世制作の祖本/「擬人化」の問題と物語の幻想化,妖怪化/「戯画」と「妖怪画」,擬人化と獣化・鬼化/妖怪物語絵巻と妖怪図鑑化


あとがき 242



参考・引用文献 246
百鬼夜行絵巻分類別所蔵元リスト 249
図版協力 254