『割ばしの旅』

おおば比呂司

(1976年5月5日刊行,東京堂出版,東京,207 pp.)

小野崎の〈Shingoster LIVING〉にて,期間限定で開催された〈本と本棚〉というイベントで入手.元は根津にあっていまは表参道に移転した〈オヨヨ書林〉の古書などが並べられていた.本書もオヨヨ書林からの出品.東京堂出版の本にときどきある横長の本.食べ歩きの画文集.今から三十年も前の本なのに,とても趣きがあります.ほんとうは函入り,カバージャケット付きらしいが,真っ赤な装丁の本体だけがやってきた.ありがとう.

日本全国,北から南までの「喰い歩き」の記録.今だったらカラー写真をふんだんにあしらって,ヴィジュアルな本に仕立てあげていたことだろう.しかし,30年も前の本書は実にレトロで味わい深い画文集.絵は著者自身によるデッサンだ.モノクロな絵を見ながら実物の「料理」を想像するのは意外に心地よいかもしれない.あまりにもきれいなカラー写真だと,想像する余地は最初からまるでなくなるからだ.かつての椎名誠の本で同じような趣きの食い物本があったことを思い出した.

ひょっとしたらすでに絶滅してしまったタイプの「グルメ本」かもしれない.