『生物系統学』

三中信宏

(1997年12月15日第一刷刊行/1999年10月15日第二刷刊行(正誤表)/2004年9月15日第三刷刊行, 東京大学出版会ナチュラル・ヒストリー・シリーズ], 東京, xiv+458 pp., 本体価格5,600円, ISBN:4130601725コンパニオンサイト版元ページ

ぼくにとっての最初の単著だが,今でも参照されているようなので,小見出しまで含めて目次の詳細情報を公開した.参考になれば幸いです:

【目次】

プロローグ:進化生物学に生い茂る系統樹 i

第1章:なぜ系統を復元しなければならないか? 1

 1−1節:歴史を推定すること 1

  1−1−1:歴史の中心主体は誰か? 1

  1−1−2:歴史叙述と年代記推定 5

  1−1−3:歴史学 - 唯一性と蓋然性の科学 8

 1−2節:永遠の分類、久遠の体系 10

  1−2−1:体系化の呪縛、あるいは分類の泥沼 10

  1−2−2:存在の大いなる連鎖 - 体系・分類・"方法" 13

  1−2−3:ダーウィンは頭上を駆け抜けていった - 分類学は永遠に 15

 1−3節:系統樹思考と分類思考 19

  1−3−1:系統推定と分類認知との峻別 19

  1−3−2:分類は表現手段にすぎない 21

  1−3−3:「醜い家鴨の仔」の狼藉 23

  1−3−4:ヒトの認知は論拠とはいえない 26

 1−4節:分類思考の認知的基盤 30

  1−4−1:分類学的直感とは何か? 30

  1−4−2:認知科学としての分類学 32

  1−4−3:結末 − 偽りの蜜月の終焉 34

第2章:系統とは何か? 38

 2−1節:進化史が物語るもの 38

  2−1−1:進化生物学における歴史の復権 38

  2−1−2:生物は記録媒体である 41

  2−1−3:由来関係の構造:分岐図と系統樹 43

  2−1−4:未知なる系統パラメーター 46

 2−2節:関係の構造、関係の代数 49

 2−3節:萌え出づる:関係図としての樹形図 53

  2−3−1:分岐図を定義する 54

  2−3−2:系統樹を定義する 55

 付録 − 私家版『順序づくし』 59

インテルメッツオ:「アルボス」あるいは樹の詩 64

 1.理論分類学のたわめられた現代史 - Woodger,Gregg,民俗分類学 66

 2.自然類と本質:わが内なる分類思考を見つめて 71

 3.乖離と分岐:別々の世界への旅立ち 75

第3章:分岐学:その起源と発展 81

 3−1節:系統の大いなる分岐 - 前史,すなわち言語,写本,古因学 81

  3−1−1:分類科学と古因学:William Whewellの学問分類 81

  3−1−2:変わりゆく言語、揺れ動く本文:分岐学の祖系をたどる 87

 3−2節:日はまだ昇らず:たそがれる世紀末体系学 91

 3−3節:Willi Hennig と分岐学の黎明期(1931〜1966) 99

  3−3−1:失われた聖櫃:Hennig初期理論を読む(1931-1950) 100

  3−3−2:公約と実行:漸進進化するHennig理論(1950-1966) 106

  3−3−3:濫觴へのまなざし:「ロシア草稿」再発見の密やかな波紋 116

  3−3−4:夜明け前の点景:異国へのルーツ探しの旅 118

 3−4節:空間・時間・系統−歴史生物地理学への道 123

  3−4−1:分断される「分断」:その概念史的エピソード 124

  3−4−2:前進する派生的子孫:Hennig-Brundinの系統生物地理学 126

  3−4−3:反復する一般分布圏:Croizat-Crawの汎生物地理学 129

  3−4−4:からみあう種分岐図:Nelson-Platnickの分断生物地理学 137

 3−5節:軋轢と葛藤:体系学大論争の時代(1966〜1980) 143

  3−5−1:第1幕−体系論争:分類学3学派の出現 144

  3−5−2:長引く消耗戦、そしてフェイドアウト 151

  3−5−3:Hennigを越えて:プロセス理論からの訣別 157

   3−5−3−1:分類と体系:Darwinへの回帰 157

   3−5−3−2:ファジーな樹形図の森で迷う 159

   3−5−3−3:呪文からの解放 162

 3−6節:聖書解釈と異端粛清−発展分岐学への変容と再編 164

  3−6−1:第2幕−パターンvsプロセス論争:発展分岐学をめぐって 165

   3−6−1−1:Gareth Nelsonと比較生物学:乾いた樹形図の楽園 167

   3−6−1−2:グラフ,ネットワーク,半順序−系統シュタイナー問題の出現 175

   3−6−1−3:たんなるアップデート:Hennig論証方針から大域的最節約法へ 179

  3−6−2:分岐学派のクレード進化−"パターン分岐学"なる藁人形 187

  3−6−3:公約の実現に向けて:プロセス理論への回帰−第3幕への序曲 192

第4章:分岐学に基づく系統推定:最節約原理をどのように用いるか? 197

 4−1節:系統樹への遠い道のり 197

  4−1−1:樹形グラフに関するいくつかの用語 198

  4−1−2:データのタイプ:形質状態/距離、離散/連続、順序/無順序 200

  4−1−3:形質状態、距離、保持される情報 202

 4−2節:涙なしの最節約−ある対話 207

  4−2−1:【オッカム迷宮:ゾーン1】−シュタイナーの呪文 207

  4−2−2:【オッカム迷宮:ゾーン2】−往路の虎、復路の狼 211

  4−2−3:【オッカム迷宮:ゾーン3】−メトリック・シティー横断 213

  4−2−4:【オッカム迷宮:ゾーン4】−魔窟「NPノ果テ」への潜入 216

  4−2−5:【オッカム迷宮:最終ゾーン】−剃刀の浄められた系譜 218

 4−3節:仮想祖先はどんな形質状態を持っていたのか? 222

  4−3−1:中央値原理:仮想祖先を最節約復元する 223

  4−3−2:最節約復元された形質状態の性質 227

  4−3−3:なぜ最節約復元するのか? 233

 4−4節:最節約分岐図はどれか? 238

  4−4−1:シュタイナーの遺産:最小全長を持つ分岐図の探索 238

  4−4−2:ホモプラシー度:形質データと分岐図との一致性を測る 245

  4−4−3:複雑性の山に分け入る 253

 4−5節:その分岐図はどれくらい信用していいのか? 256

  4−5−1:コンピューター集約型統計学による誤差評価 257

   4−5−4−1:ブーツストラップ法 258

   4−5−4−2:ジャックナイフ法 260

   4−5−4−3:生態・行動学研究への適用 262

  4−5−2:推定量としての分岐図:ブーツストラップによる再現性評価 262

  4−5−3:歪む樹長分布:分岐図空間の島嶼地理学 271

  4−5−4:無作為ならべかえによるデータの質の検証 279

 4−6節:最節約法の名のもとに:分子分岐学の出現 281

  4−6−1:最尤法と距離法:分子系統学での競争者たち 281

  4−6−2:最節約法は真実を導くか?−一般化最節約法を目指して 284

  4−6−3:形質進化モデルの組込み:レッドゾーンからの脱出 289

 4−7節:系統はツリーではない:分岐図からネットワークへの滑らかな進化 295

  4−7−1:どうして樹にこだわるの?−認知様式としてのツリー 296

  4−7−2:樹の集合としての網状図:高次元ネットワークの試み 304

   4−7−2−1:分岐図の加法と乗法−ボトムアップ網状化 305

   4−7−2−2:超立方体の開封と展開−トップダウン網状化 310

  4−7−3:リゾームに明日はない:ネットワーク思考へのさらなる道のり 323

   4−7−3−1:進化モデルとしてのグラフ−樹と半束 324

   4−7−3−2:ねじれるネットワーク:半束上の最節約復元 327

第5章:系統が語ることば:分子から形態へ、遺伝子から生物地理へ 330

 5−1節:種間比較法:形質進化仮説の系統学的検証 330

  5−1−1:Felsensteinの園:進化史的視点への回帰 331

   5−1−1−1:桎梏−系統的制約の問題 332

   5−1−1−2:懊悩−統計的独立の問題 334

   5−1−1−3:結界−比較法の放散進化 336

  5−1−2:形質進化モデルの系統学的検証 339

   5−1−2−1:形質相関進化−Maddison(1990)の集中変化検定 339

   5−1−2−2:親亀こけたら皆こけた−最節約復元の影響 343

  5−1−3:溺れる者は分類をもつかむ?−災厄としての分類体系 348

 5−2節:中心主体の階層化:1階分岐図と2階分岐図 349

  5−2−1:居住地と居住者:一般的な問題状況 350

  5−2−2:種分岐図から地域分岐図へ(1):解くべき問題 352

  5−2−3:種分岐図から地域分岐図へ(2):解析方法 357

 5−3節:系統分類体系:系統関係の射影としての分類体系 364

  5−3−1:単系統・側系統・多系統 364

  5−3−2:グレードからのお誘い 374

  5−3−3:注釈付きリンネ階層:拘束衣を着た系統樹思考者 375

  5−3−4:"系統分類学":拘束衣を脱いだ系統樹思考者 378

  5−3−5:なぜ単系統でなければならないか? 380

 5−4節:「かたち」の蠱惑、形態学の憂鬱 381

  5−4−1:形態データはもういらないのか 384

  5−4−2:分岐図の上のD'Arcy Thompson:形態測定学と系統解析の対話 385

   5−4−2−1:空転の年月−測るべきか測らざるべきか 385

   5−4−2−2:標識点データからのサイズ/シェイプ因子 389

   5−4−2−3:形状差異の局所解析−薄板スプライン解析序説 392

  5−4−3:結合派 vs 分割派−論争はなお続く 397

エピローグ:分岐学の現代的チューンナップ、そしてクリオへの賛辞 401



付録:インターネット資源の利用 409

参考文献 411

索引 451