アルベルト・マングェル[野中邦子訳]
(2014年6月10日刊行,白水社,東京,430+14 pp., 本体価格3,800円, ISBN:9784560083574 → 版元ページ)
真夏日のシエスタにページをめくる昼下り.「「私」という声」(pp. 193-205)に,ダンテ〈神曲〉地獄篇に関する言及あり.「それならば是非ともこの暗黒界を無事に脱して,美しい星々を仰げるところへ帰ってくれ」(p. 196)という一節が,地獄篇のエンディングに呼応していることを知った.藤谷道夫訳〈神曲〉を見ると,こう訳されている:
[81] 自身の心に従って臆することなく話す君は幸いなるかな。
[82] それなればこそ、君が、この常夜の地を無事に脱して地上に戻り、
[83] ふたたび美しい星々を仰ぎ見んことを。いつの日か
[84] 『私は(地獄に)行った』と言うのが君の喜びとなるそのとき、
[85] どうか地上の人々にわれらのことを語ってもらいたい。
(藤谷道夫訳:ダンテ『神曲』地獄篇対訳(上),第16歌81-85行)
この「美しい星々を仰ぎ見ん(riveder le belle stelle)」の一節が,「地獄篇」のエンディング:
[139] 私たちはそこから外に出て、再び星々を仰ぎ見た。
[E quindi uscimmo a riveder le stelle.]
(藤谷道夫訳:ダンテ『神曲』地獄篇対訳(下),第34歌139行)
に対応しているということだ.