『酒の肴・抱樽酒話』

青木正

(1989年6月16日刊行,岩波書店岩波文庫・青165-2],東京,238 pp., ISBN:4-00-331652-5版元ページ

楽天漢詩「橋亭卯飲」の一節が引用されている:「生計悠悠身兀兀/甘従妻喚作劉伶」.青木正児の訳によれば:「暮しはのんびり身はぐでんぐでん/細君に呑助殿と呼ばれても一向平気」という意味らしい.とてもいい人生ですなあ.かくありたいものだなあ.青木センセイは自他ともに認める「のんべ」.しかも「市井の縄暖簾というやつは好みません」(p. 207)という家飲み派.

「『酒中趣』の序」に曰く:「酒はもともとわが性の愛するところ,酒を飲み,酒の書を著すことは,楽しみ中の楽しみである」という青木センセイの暮らしぶりはといえば……:「晩酌して早く床に入り,ラジオを聴きつつ眠る,二時か三時頃に目が覚める.静かに書斎に坐して物を書く.ほっこりすると,煙草代りに瓢箪の酒を二杯か三杯飲む.飲み過ぎて睡くなると,また床に入ることもある.朝飯前にまた冷酒を小さいコップに少量飲む」(p. 230)― 羨ましすぎる.