「心理学者が教える少しの努力で大作を書く/多作になるためのウサギに勝つカメの方法」

読書猿Classic: between / beyond readers(2013年9月8日)

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とても参考になる記事.この記事で「binge writer」ということばを初めて知った.文章があふれるように書けるときはいいんだけど,いったん「書けなくなってしまったとき」の書き手の追い込まれた心理状況は,確かにこの記事に書かれている通りだと思う.つい先ごろまで,長く引きずってきた英文原稿がなかなか書けなかったワタクシもまた binge writer のひとりだったにちがいない.英語の文章では書くテンポやスタイルがちがうので,日本語の文章のようには進まない.それを言い訳に binge に陥ってしまった.問題はどうやってその “崖っぷち” から自らを救出するか.書くことの心理学ってとっても重要.

この記事中にある,書くことを「スケジュール化」するっていう表現はなんだか “ビジネスマン” 的でワタクシには違和感があるのだが,書かねばならない「場」を自分で意識的に用意するという心構えは確かに必須だろう.かつてワタクシが実体験したように,本郷〈ルオー〉2階の “独房” にて,担当編集者と対面で長時間原稿を書いたときは も の す ご く 捗った.ああいう「場」を自発的につくれるかどうかが,binge writing に陥らないための決め手なのだろう.

また,どれだけ書けたかを「公表」するというのは効果的かもしれない. “さらすだけダイエット” 法のように「さらすだけライティング」というのはきっと効果があるにちがいない.ワタクシもときどき「〜 words だん」とつぶやいてきた.

元記事には,ある心理学者(Paul J. Silvia 2007)が記録した「一日あたり書いた words 数」のグラフが転載されている.この研究者の最頻値は「500 words / day」に届かない.英語を第一言語とする書き手でも,それくらいのペースがふつうなんだ.このグラフを見ただけでも心理的にはずいぶんラクになる.第一言語以外でものを書くのはそれくらいプレッシャーがかかるもの.

引用文献:Paul J. Silvia『How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing』(2007年刊行,American Psychological Association, ISBN:9781591477433 [pbk] → 版元ページ).※もちろん速攻で発注しました.

—— 悩める書き手であるワタクシにとってはとてもいい記事でした.どうもありがとう.