『解体新書と小田野直武』

鷲尾厚

(1980年5月1日刊行,翠楊社[郷土の研究1],ISBNなし/1039-04011-3736)



ぼくがこの本を古書で入手したのは,大学院の修士だった頃で,渋谷の道玄坂にあった文紀堂書店に立ち寄ったときにたまたま見つけた.もちろん,当時は秋田の蘭画家・小田野直武の名前を知っているはずもなく,単に『解体新書』の原書が全復刻されているというのに惹かれて買ったにちがいない.角館のある小田野家を訪ねることになるのは後のことだ.

本書『解体新書と小田野直武』は,小田野直武の没後200年に出版された.しかし,その後,版元がなくなったために絶版になっていた.無明舎出版はそれを受けてリプリントしたということだろう.無明舎出版の新刊案内には事情が説明されている.

蘭学つながりということでいえば,後に平凡社東洋文庫に復刻された『前野蘭化』の私家版初版は,札幌の北大前にある南陽堂書店の店頭でたった一度だけ見かけたことがある.これまたとても惹かれるものがあったが,なんせ「19,000円」という値札が付いていたので,あっさりと撤退してしまったのは考えてみれば惜しいことをした.当時は,「古書は一期一会」という格言がまだ身に染みていなかったのだろう.




【目次】
序にかえて 2
写真資料 5


解体新書 序図 (復刻) 9
解体新書 巻之一(復刻) 83
解体新書 巻之二(復刻) 129
解体新書 巻之三(復刻) 177
解体新書 巻之四(復刻) 227
源姓小田野氏分流系図 285


解体新書について 290
   〈付〉序・自序・凡例の釈文 295
解体新書の「角館図書館本」について 313
小田野直武ノート 322
  一、直武の家祖 322
  二、直武の祖父と系図上の父 336
  三、『北家日記』に見る直武の父 343
  四、直武の生地「角館」 359
  五、直武の生涯 371
資料 440
著者あとがき 450
刊行を祝して (陶日出男) 452