『Evidence and Evolution: The Logic Behind the Science』

Elliott Sober

(2008年4月21日刊行,Cambridge University Press,Cambridge,xx + 392 pp.,ISBN:9780521871884 [hbk] / ISBN:9780521692748 [pbk] → 著者サイト正誤表[pdf]



ごくニュートラルな書名だけでは何の本やらとらえどころがないかもしれない.しかし,目次をざっと見ると,本書が進化学における推論の基礎となる「証拠(evidence)」について論じた本であることがわかる.つまり,統計学的な意味での「証拠」(Richard Royall の尤度本から議論は始まっている)のもつ生物学哲学的な考察を目指す.

自然淘汰仮説のテスト,そして系統推定の論理など,著者がこれまで何冊かの本で進めてきた論議がこの本では集成されているのだろう.ベイズ主義に対する厳しい批判が,モデル選択論における赤池情報量基準(AIC)の科学哲学バージョンとともに示されているのは,現在進行中の論争の反映と思われる.

届いたばかりでまだブラウズの域を出ていないが,そのうちしっかり読むことになるだろう.進化学・系統学における仮説検証を論じている点で,前著『The Nature of Selection』(1984)と『Reconstructing the Past』(1988)の直接子孫にあたる本と位置づけられるだろう.ID説(インテリジェント・デザイン説)に関する大きな章が置かれているのが目新しい.

なお,最後のパラグラフ(pp. 366-367)で,“palaetiological sciences”と書かれるべき箇所が“palaeontological sciences”と誤記されているが,この点についてはすでにソーバー教授に連絡済み.