『熱海温泉誌〔市制施行八〇周年記念〕』読了

熱海温泉誌作成実行委員会(編)
(2017年4月10日刊行,熱海市出版文化社,東京, 383 pp., 本体価格3,000円, ISBN:978-4-88338-614-7目次熱海市ページ

大判4段組400ページを読み通すのはかなりの力仕事だった.熱海温泉はもちろん知っていたが,滞在したことはこれまで一度もない.となりの熱川温泉,伊東温泉,そして北川温泉は行ったことがあるが,本家本元の熱海温泉については実はよく知らない.本書は熱海温泉発祥の歴史から始まって,近世から現代に至る変遷の歴史,さらには温泉科学の観点から見た特性など盛りだくさんの内容が詰め込まれている.歴史的な写真や絵図や絵葉書が随所に散りばめられていてみるだけでも十分に楽しめる.それにしても活字が多すぎる…….

熱海の温泉街の中心にあったシンボル的な「大湯」は大規模な間歇泉として有名だったが,関東大震災後の大正年間にはもう枯渇してしまったことを知った.また,熱海の泉質が「食塩泉」である理由は地下水と海水が混ざったためであることもわかった.交通の便がとても悪いロケーションだったが,東海道線が開通してからは,関東有数の温泉保養地としてばかりではなく,温暖な別荘地としても資産価値が高まったという.湯の町としての現在の景気の悪さを考えると隔世の感がある.熱海の街を歩く機会があればよく観察したい.

本書は新刊ではもう入手できないようで,古書価がかなり上がっている.新刊で出たときにすぐ買って置くべきだったと後悔先に立たず.