『〈自閉症学〉のすすめ:オーティズム・スタディーズの時代』目次

野尻英一・高瀬堅吉・松本卓也(編著)
(2019年4月30日刊行,ミネルヴァ書房,東京, xii+367+6 pp., 本体価格2,000円, ISBN:9784623086481版元ページ

新刊ご恵贈ありがとうございます.400頁の論集が2,000円とは破格の安値.

【目次】
まえがき i

 

第1章 心理学──心の世界の探究者からみた自閉症(高瀬堅吉) 1
 コラム01 「働くこと」からはみ出すために(高森明) 23
第2章 精神病理学精神分析──世界体験を通して理解する自閉症松本卓也) 29
 コラム02 「自閉」の概念はどう生まれたのか?(佐藤愛) 56
第3章 哲学──「人間」を考え続けた2500年の歴史が変わる(野尻英一) 61
 コラム03 「自閉症津軽弁を話さない」(松本敏治) 98
第4章 文化人類学──ブッシュマンとわが子における知的障害の民族誌(菅原和孝) 103
 コラム04 自閉症と芸術(佐藤愛) 133
第5章 社会学──自閉症から考える親密性と共同性のあいだ(竹中均) 137
 コラム05 自閉症と知覚世界(三浦仁士・相川翼) 164
第6章 法律──自閉症が生みだす「法」(内藤由佳) 169
 コラム06 政治学から自閉症をみる(高橋一行) 198
第7章 文学──フィクションにおける「心の読みすぎ」と「透明化された体」(持留浩二) 205
 コラム07 自閉症断想──自我の基礎構造と精神疾患那須政玄) 234
第8章 生物学──遺伝子変異と発生から解明する自閉症大隅典子) 239
 コラム08 数学的物理学的知性と自閉症スペクトラムとの親和性(生田孝) 258
第9章 認知科学──脳の認知粒度からみえてくる自閉症とコミュニケーション(小嶋秀樹) 263
 コラム09 TRPGを用いた自閉スペクトラム症児へのコミュニケーション支援(加藤浩平) 283
鼎談 今なぜ自閉症について考えるのか?──〈自閉症学〉の新たな可能性へ向けて(國分功一郎×熊谷晋一郎×松本卓也) 289

 

自閉症当事者本リスト 327
引用文献一覧 349
あとがき 365
索引 [1-6]

『生きているのはなぜだろう。』

池谷裕二(作)・田島光二(絵)
(2019年5月15日刊行,株式会社ほぼ日,東京, 56 pp., 本体価格1,700円, ISBN:9784865013801版元ページ

ご恵贈感謝.ハードカバーの絵本.非売品の『生きているのはなぜだろう。—— 第一稿の本』と『絵本に『生きているのはなぜだろう。』ついて』という冊子が同封されていた.

『見ることは信じることではない:啓蒙主義の驚くべき感覚世界』目次

キャロリン・パーネル[藤井千絵訳]
(2019年5月10日刊行,白水社,東京, 245+40 pp., 本体価格3,400円, ISBN:9784560096895版元ページ

【目次】
序論 9
第1章 自分で自分を作る――啓蒙主義時代の「天才」の作り方 21
第2章 新しい飲み物で、新しい自分になる――カフェでの自己投薬、感受性、交際 40
第3章 音の世界で生きる――パリの闇に沈む市場 62
第4章 有用な市民になる――盲目の(そして、目隠しされた)子供たちの才能 81
第5章 尻に煙を吹き込む――匂いの医学と有用な科学 96
第6章 感覚とは何か――セックス、自己保存、快楽、そして苦痛 117
第7章 ハーモニーを奏でる自然――猫ピアノ、色彩チェンバロ、匂いと味の音階 139
第8章 洒落男を気取る――人気顔料の政治学 164
第9章 美食家のまなざし――革命後の時代の「目で食べる」行為 186
第10章 自然を消化する――十九世紀イギリスのエキゾチックな動物試食クラブ 207
エピローグ 見ることは信じることではない 228

 

謝辞 239
訳者あとがき 243
図版クレジット [39-40]
原註 [9-38]
索引 [1-8]

『測りすぎ:なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』目次

ジェリー・Z・ミュラー[松本裕訳]
(2019年4月16日刊行,みすず書房,東京, xiv+189+22 pp., 本体価格3,000円, ISBN:9784622087939版元ページ

社会や大学や企業ででかい顔をしている「数値評価」への警鐘本.現代社会を広範に蝕む「測定基準への執着」の病理をえぐり出す.いつでも誰でも “測定執着” の餌食になるからこそ必読.もっと目立つタイトルとカバージャケットにすればよかったのにねぇ…….

【目次】
はじめに 1

Part I 議論 15

1 簡単な要旨 17
2 繰り返す欠陥 23

Part II 背景 27

3 測定および能力給の成り立ち 29
4 なぜ測定基準がこれほど人気になったのか 39
5 プリンシパル、エージェント、動機づけ 49
6 哲学的批判 59

Part III あらゆるものの誤測定?――ケーススタディ 67

7 大学 69
8 学校 91
9 医療 103
10 警察 125
11 軍 131
12 ビジネスと金融 137
13 慈善事業と対外援助 153
14 透明性が実績の敵になるとき――政治、外交、防諜、結婚161

Part IV 結論

15 意図せぬ、だが予測可能な悪影響 171
16 いつどうやって測定基準を用いるべきか――チェックリスト 177

 

謝辞 187

 

原注 [3-22]
人名索引 [1-2]

『発酵食の歴史』読売新聞書評

マリ=クレール・フレデリック[吉田春美訳]
(2019年2月27日刊行,原書房,東京, 341 pp., 本体価格3,500円, ISBN:9784562056330目次版元ページ

読売新聞大評が公開されました:三中信宏三中信宏「人間の生存支える — 発酵食の歴史 NICRU,NICUIT…マリー=クレール・フレデリック著」」(2019年5月5日).



人間の生存支える

 細菌や菌類などの微生物の作用によってつくられる発酵食は日本の日々の食卓でもおなじみだ。和食ならば味噌・納豆・漬物・醤油、洋食ならばパン・チーズ・熟成肉・ヨーグルトなど枚挙にいとまがない。世界の食文化に目を向ければさらに多様な発酵食がある。発酵食の歴史をたどる本書は「人間のいるところに発酵食あり」とし、われわれ人間が発酵食ときわめて密接にかかわりながら生きてきたことを世界中の発酵食の例を挙げながら論じる。

 人類進化の黎明期からヒトの祖先は採集狩猟生活の中で食料の保存という生存上の重大な問題に直面していた。生肉や生野菜は常温でそのまま放置すれば環境中の微生物の働きによりすぐ傷んでしまう。しかし、人間にとって害をなす「腐敗」と逆に益をもたらす「発酵」とは現象的には表裏一体である。本書前半の第一部では、かつての人間が目に見えない微生物の作用をいかにコントロールして保存性の高いしかも美味な発酵食をつくってきたのかについて考古学上の遺物や歴史書あるいは神話や伝説を通して探る。

 続く第二部では現在の世界に広がる発酵食文化の全貌を見渡す。上に挙げたさまざまな発酵食料はもちろん、ビールやワインなどのアルコールを含む発酵飲料もまた重要な発酵食のカテゴリーであると指摘される。たとえば日本酒は、麹菌と酵母による並行複発酵という世界的に類を見ない特殊な発酵方式による発酵飲料である。人間の飲食のすべてに発酵は深く関わっている。

 最後の第三部では、昨今の“清潔志向”が、発酵を営む微生物に対する過敏な警戒心をもたらしている現状を憂える。とにかく殺菌・抗菌処理をすれば安心だという風潮はまちがっていると著者は指摘する。しかし、しょせん人間は微生物の敵ではない。彼らはすぐ人間のもとに戻ってきて、われわれの生存を陰でしっかり支えてくれる。発酵バンザイ。微生物に幸あれ。吉田春美訳。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2019年5月5日掲載|2019年5月17日公開)