『生きもの民俗誌』第III〜V章メモ

野本寛一
(2019年7月30日刊行,昭和堂,京都, xviii+666+xxiii pp., 本体価格6,500円, ISBN:9784812218235目次版元ページ

第III章「蛇——ヘビ」(pp. 409-466):「マムシ」「ハブ」「アオダイショウ」の民俗動物学譚いろいろ.食物連鎖的には益獣にして害獣,祟ったり守護したり,にょろりにょろり.第IV章「魚介——サカナ・カイ」(pp. 467-535):魚としてはアマゴが,また貝としてはタニシが取り上げられている.第V章「昆虫——ムシ」(pp. 537-646):コオロギ・ケラ・ワタムシ・カメムシ・クスサン・ブユとカ・ノミとシラミ・ハチ.人間から見た益虫/害虫としての遠近によりさまざまな民俗と文化あり.終章「旅の終わりに」(pp. 647-664):自伝的回顧とともに民俗動物学の現代的意義を説く:「人は,植物を含む多くの生きものと同一地平に生きるところから出発している.ところが,時を経るにつれて人と生きものとの距離・懸隔の幅は広がった.それは物理的な距離のみならず,心理的な距離においても然りである」(p. 663)|「この課題に対する答えを得るに際しては,先人たちの体験や伝承知,生きもの観などが有益な示唆を与えてくれるにちがいない」(p. 664).700ページもの厚さだったが,充実した読後感.これにて完読.

『在野研究ビギナーズ:勝手にはじめる研究生活』

荒木優太(編著)
(2019年9月1日刊行,明石書店,東京, 286 pp., 本体価格1,800円, ISBN:9784750348858目次版元ページ

サクッと読了.各著者たちはどう見ても “在野研究プロフェッショナルズ” だよねえ.研究者は職業ではなく生き方であるという指摘(p. 90)は確かに当たっている.

『中世紋章史』目次

ゲオルク・シャイベルライター[津山拓也訳]
(2019年8月26日刊行,八坂書房,東京, 322+20 pp., 本体価格4,500円, ISBN:9784896942644版元ページ


【目次】
序言 3
第I章 紋章の黎明期 11
第II章 紋章の普及と定着 51
第III章 楯意匠と兜飾り──紋章の主要モチーフをめぐって 95
第IV章 紋章の言語、時代様式、色彩 169
第V章 紋章官とその世界 219
第VI章 寓意と象徴の紋章学──シンボル・伝説・架空紋章 255
結び 紋章の行方 311

訳者あとがき 317

参考文献 [15-20]
追加図版出典 [14]
索引 [1-13]

『アラスカ探検記:最後のフロンティアを歩く』目次

マーク・アダムス[森夏樹訳]
(2019年9月2日刊行,青土社,東京, 428+vi pp., 本体価格2,600円, ISBN:9784791772070版元ページ


【目次】
プロローグ グレーシャー・ベイ国立公園 13

1 メリアム氏を訪問 ワシントンDC 18
2 すべては北をめざす ニューヨーク市 23
3 第一級の男たち ハリマンの特別列車で西へ向かう 32
4 二人のジョニー シアトル 40
5 フェリーの話 ケニコット号に乗って 48
6 大いなる大地 北太平洋で 58
7 「野蛮人を文明化すること」 アネット島 64
8 秘められた歴史 アンカレッジ 69
9 降雨量が最大の地で生き抜く ケチカン 76
10 よく考えてみると メトラカトラ 83
11 悪魔も心配しかねない ランゲル 90
12 一九七九年夏 フォート・ランゲル 97
13 創造の朝方 スティキーン川 106
14 危険信号 トレッドウェル鉱山 113
15 石油 ジュノー 116
16 財政危機 アンカレッジ 122
17 チルカット族の土地 ヘインズ 132
18 クロンダイク・ゴールドラッシュ スキャグウェイ 143
19 ロシア領アメリカ ペリル海峡 152
20 絶対に必要なもの シトカ 169
21 氷山 グレーシャー・ベイ 175
22 ハリマンと狩りをする 遠吠えの渓谷 184
23 移転 グスタバス 190
24 心を奪われたミューア グレイシャー・ベイ 209
25 揺られたり、かきまわされたり フェアバンクス 231
26 行き止まり ヤクタット 247
27 生態学上の災害科 その予見 オルカ 258
28 生態学的の災害 その余波 コードバ 269
29 入江発見 ハリマン・フィヨルド 278
30 風変わりな町 ウィッティア 285
31 温暖化傾向 ハリマン氷河 293
32 完全武装して コディアック 299
33 クマに囲まれた生活 ユーヤク・ベイ 305
34 過去から吹く風 一万本の煙の谷 322
35 絶滅寸前 プリビロフ諸島 345
36 アリューシャン列島の地元民 タスツメナ号に乗って 350
37 忘れ去られた戦線 ダッチハーバー 363
38 新ゴールドラッシュ ノーム 372
39 グリーンマン ワシントンDC 386
40 ランズ・エンド シシュマレフ 398

エピローグ ニューヨーク市 408

資料について 414
著者ノート 417
謝辞 418
参考文献 421
訳者あとがき 424
索引 [i-vi]

『ナボコフ・コレクション —— 賜物/父の蝶』

ウラジーミル・ナボコフ沼野充義・小西昌隆訳]
(2019年7月25日刊行,新潮社[ナボコフ・コレクション],東京, 635+ii pp., 本体価格5,700円, ISBN:9784105056094版元ページ

前半は沼野充義訳の長編〈賜物[Дар]〉(pp. 7-559),後半は小西昌隆訳の短編〈父の蝶[Отцовскиe бабочки]〉(pp. 561-609)で初の日本語訳とのこと.ワタクシ的には〈父の蝶〉にとても強く惹かれる.作家ウラジーミル・ナボコフは,けっして “在野研究者” ではなく,ハーバード大学比較動物学博物館とコーネル大学でキュレーターを務めたプロの昆虫学者としてのキャリアをもつ.この短編小説にはチョウの自然分類と種概念に関する言及もあり,読む人が読めばきっとおもしろいにちがいない.読者を選ぶ文章.

『消えた山人:昭和の伝統マタギ』目次

千葉克介
(2019年8月5日刊行,農文協,東京, 159 pp., 本体価格2,500円, ISBN:9784540151002版元ページ

秋田の伝統的なマタギの写真集.猟のスタイル,獲物のさばき方,そして独特の生活・習俗・文化・信仰について.


【目次】
まえがき 1
地図 —— 秋田県内の主なマタギ集落と取材地 6

伝統的なマタギの世界 —— 大正・昭和初期の姿 7
玉川マタギ —— 集団的クマ猟と生活技術 31
百宅マタギ —— 山の神信仰と熊祭り 79
マタギ —— 伝統的ウサギ猟 131
鷹匠 —— クマタカによるウサギ猟 150

あとがき 155
参考文献 157
資料提供 157

解題[塩野米松] 158

『クモの奇妙な世界:その姿・行動・能力のすべて』目次

馬場友希
(2019年9月1日刊行,家の光協会,東京, 351 pp., 本体価格1,800円, ISBN:9784259547691版元ページ

著者は農環研ホープのひとり.さあ,みなさんも蜘蛛の糸に絡め取られましょう.読売新聞の読書委員会では「なぜ家の光協会が蜘蛛の本を?」との素朴な疑問が出ましたが,そんなん知らんがな.


【目次】
図説 2
はじめに 12
第1章 クモの生き方 恋のかけひき 19
第2章 クモの生き方 それぞれの秘技 65
第3章 クモの生き方 知られざる一面 161
第4章 人間とクモが交わるところ 221
第5章 さあ,クモの世界へ踏み込もう 283
おわりに 338
引用文献 [351-343]