『全日本食えば食える図鑑』

椎名誠

(2005年7月30日刊行,新潮社,ISBN:4103456175



うーん,20年前の前著『全日本食えばわかる図鑑』との関連性はかぎりなく希薄.ゲテモノ食どころか,全体としてはとてもまともな“民俗食物学”の本ではないか.たとえて言えば,「小泉武夫」的な印象を受ける本だ.もちろん,『食えばわかる』以来の懸案事項だった「アオイソメ・ゴカイ丼」の雪辱?を逃げ腰で果たさんとする著者が,三陸メデューサ“エラコ”に挑戦する箇所もあったりする.しかし,それ以外のほとんどの章は,昆虫食だったり発酵食だったりあるいは自然食だったり,とてもとてもマトモなつくりの本ではないか.鹿肉の食文化がない日本人にどのようにして北海道で増え過ぎたエゾシカを食わせるようにできるのかとか,琵琶湖を席巻しつつある味はイマイチなブラックバスを食うための努力とか,とにかく著者の中での「20年間」の時の流れはこの2冊を比べつつ「読めばわかる」.