『修復の理論』

チェーザレ・ブランディ[小佐野重利(監訳)|池上英洋・大竹秀実訳]

(2005年6月30日刊行,三元社,東京, 本体価格3,000円, ISBN:4-88303-159-4版元ページ



絵画や彫刻などの芸術作品の〈修復〉のあり方を論じた本.「唯一無二性」(p. 21の紹介文)を特徴とする芸術作品の〈修復〉は,大量生産される工業製品の〈修理〉とは異なる原理・原則に則る必要があるという.著者は,芸術と言う“人造物”に対してのみ〈修復〉という概念を適用しようとしているように見えるが,唯一無二性をもつ“自然物”に対しても同様の論議ができるのではないだろうか.

それにしても,なんと“造り”のしっかりした本であることか.この本は,装幀もりっばなら,組版もいい感じです.こういう本なら高くても(実際には安いけど)買う気になるね.




【目次】
日本語版まえがき:チェーザレ・ブランディについて(ジュゼッペ・バジーレ) 7

修復の理論 25

1 修復の概念 27
2 芸術作品における物質 36
3 芸術作品の潜在的な統一性 44
4 芸術作品と修復に関する時間 62
5 歴史性の要件からみた修復 76
6 美的な要件からみた修復 92
7 芸術作品における空間 118
8 予防的な修復 123

補遺 139

1 偽造 141
2 欠損部処置の理論的注解 150
3 モニュメントの修復のための原則 159
4 古代絵画の修復 166
5 パティナ、ワニスおよびヴェラトゥーラに関連する絵画の洗浄 182
6 「ワニスとグレーズに関する事実に基づく考察」 204
(Some factual observations about varnishes and glazes)
7 修復の問題として額縁を取り去るか、それとも保存するか 240

監訳者あとがき(小佐野重利) 253
註 [I-XVII]