『ダンボールハウス』

長嶋千聡

(2005年9月10日刊行,ポプラ社ISBN:4591088308



去年に出てすぐ買おうと思って忘れていた本.著者の学部卒業論文の単行本化だそうだ.こういうテーマを見つけるのが勝因だったのだろう.指導教官による解説記事の中で,今和次郎の「考現学」との関連性が指摘されている.今和次郎だけでなく,吉田謙吉の仕事にも同じような着眼が見られる.藤森照信(編)『吉田謙吉 Collection I : 考現学の誕生』(1986年11月25日刊行,筑摩書房ISBN:4480853480)の第IV章「路上の考現学」に,犬小屋の構造を観察した「犬箱の話 採集」という1928年の記事が載っている.これなど,まさに“ダンボールハウス”に相通じるものがあるように感じる.

それにしても,ダンボールハウスの“建築技術”はどのように伝承されているのだろう? 機能的制約からくるホモプラジーも少なくないだろうけど,“棟梁”がしきることもあるらしい.佐藤和歌子間取りの手帖』(2003年4月16日刊行,リトル・モアISBN:489815090X)を思わせる.