『Ernst Haeckels Bluts= und Geistes=Erbe : Eine Kulturbiologische Monographie』

Heinz Brücher

(1936年刊行,J. F. Lehmann, München,ISBNなし→目次



周縁的な事柄がなかなか興味深い.まず,この本はイェナにあった「家系研究ならびに人種政策研究所(Institut für menschliche Erbforschung und Rassenpolitik)」なる機関の出版物として公刊されたものだ.この機関は,ワイマールのチューリンゲン内務省の「チューリンゲン人種制度局(Thüringisches Landesamt für Rassewesen)」に属していたらしい.著者がどこに所属しどのような経歴の人だったかは定かではない.しかし,この人種制度局の局長が巻頭言(Geleitwort)を寄せていることからして,著者の来歴と背景はなんとなく見えてくる.

当時のドイツ国内の情勢を考えれば,この人種制度局長の手になる巻頭言に「アドルフ・ヒトラー総統」とか「アーリア的」とか「国家社会主義」という言葉がぽんぽん出てきても不思議ではない.著者の短い序言(Vorwort)は以下の通り ——




エルンスト・ヘッケルの精神的遺産は,生命の科学と熱烈な信念がもたらした人種(Rasse)と民族(Volk)が従うべき命の法則を確固として守りそして闘うすべての人にとって今なお価値がある.エルンスト・ヘッケルの人種的ならびに精神的系譜を本書が高く崇敬するのは,この意味で,北方民族の精神史がもつ不滅の価値に対して後の世代が抱く信仰心の発現とみなされるべきである.(S. 7)



わ,すごいなあ,って感じで.