『デザインとヴィジュアル・コミュニケーション』

ブルーノ・ムナーリ(萱野有美訳)

(2006年11月24日刊行,みすず書房ISBN:4622072106目次



著者は言う:




意図的なヴィジュアル・コミュニケーションの場合は,2つの側面下で考察されうる.それは美的情報と実質的情報である.[……]美感とは万人にとって同じものではなく民族の数だけ,あるいは世界の人間の数だけ存在するものだ.だから1枚の製図,あるいは一葉の報道写真に,それぞれが個別の美を見出しうる.しかしこの場合ヴィジュアル・オペレーターは,美を客観的に理解できるようなデータによって明らかにする術を心得る必要がある.(pp. 93-94)



視覚的コミュニケーター(=オペレーター)としての「視覚言語ユーザー」の使命みたいなものが必要とされるのだろう.この〈第2部〉はさまざまなデザインを集成した「図版集」のような体裁で編まれている(テキストよりは図版の方が多い).全体を通じて翻訳文はイマイチ練れていない気もするが,そこは読者ひとりひとりがしっかりとヴィジュアル・コミュニケーションに努めることで,本書の目的は達成されるにちがいない.“かたち”に関心のある読者にとって,本書はきっとおもしろいだろう.もちろん,系統樹ユーザーにとっても得るものはあるはずだ.