『Die Larvenformen der Dipteren: Eine Übersicht über die bisher bekannten Jugendstadien der zweiflügeligen Insekten』

Willi Hennig

(1948-52年刊行[Erster Teil 1948, Zweiter Teil 1950 und Dritter Teil 1952], Akademie-Verlag, Berlin)



つい先日届いたばかりだったので札幌まで携えてきてしまった.双翅目昆虫の幼虫形態に関するモノグラフ.第1巻が「iv+185pp.」,第2巻が「viii+458pp.」,そして第3巻が「viii+608pp.」もあるので,計1200ページを越える大著だ.ただし,敗戦国ドイツの終戦前後の出版事情を反映してか,紙質が極めて悪く,また装丁も仮製本みたいで,表紙などないに等しい.ただの“紙の束”と表現した方がふさわしい.

第1巻の前半60ページあまりが総論で,残りはすべて各論に当てられている.そして,総論の中で動物体系学の理念を論じているのは,「Theorie der zoologischen Systematik」 (pp. 2-22)の20ページだ.形態学的類似性ではなく,系統学的類縁性に基づく一般参照体系の構築を目指すべきであるという目標設定や空間的代置を含む種概念の提唱は,ほぼ同時に出版された『Grundzüge einer Theorie der phylogenetischen Systematik』(1950年刊行,Deutscher Zentralverlag)の内容を反映しているのだろう.今回の集中講義では,「体系学とは何か」を説明するのに Hennig のこの本を使わせてもらった.

—— このモノグラフを初めて手にしたのは,農環研に当時いた福原楢男さんの私蔵本を借りたときだった.そのときにも「この本は古くて壊れそうなので取り扱い注意です」と言われた覚えがある.ちなみに,本書を所蔵している国内機関は二つだけで,そのうち一つが北大の昆虫体系学教室だ.