『土を喰う日々:わが精進十二ヶ月』

水上勉

(1978年12月17日刊行,文化出版局,269 pp.,ISBNなし)



これまた宇治の実家の本棚に何十年も眠っていた本.京都から帰る車中でイッキ読了した.

著者の出自である京都の禅寺での精進料理の想い出とともに,厨房に立つ著者の味わい深いモノクロ写真がたくさん載っている.料理は畑と相談しながらムリなくムダなく,そして感謝とともにつくるべし.この本は,大学の3年か4年のときに,確かに自分で買った記憶がある.当時は,千駄木で自炊していたこともあって,この本を手にしたのかもしれない(著者の本は高校時代からよく読んでいたこともあったし).しかし,最後まで通読した覚えがまるでない.なぜ読了しなかったのか.まだ,そういう読むべき年代に達していなかったからか,と思って,あとがきを読んだら,この本は著者が「59歳」のときに軽井沢の仕事場で書かれた連載がもとになっていたという.ガーン.昔はずいぶん世代がちがうアナザーワールドだったはずなのに,今ではそんなに離れてへんやんか…….ちょっとショック.それはともかく,本書は土の香りがするいい本です.クワイの丸焼きが喰いたいな.

—— 本書はいまだと新潮文庫で読めるみたい:水上勉土を喰う日々:わが精進十二ヶ月』(1982年8月刊行,新潮社[新潮文庫],235 pp.,ISBN:4101141150).ただし,文庫化されてからもすでに四半世紀が経っている.