『晩酌の誕生』感想

飯野亮一
(2023年11月10日刊行,筑摩書房ちくま学芸文庫・イ-54-4], 東京,375 pp., 本体価格1,300円, ISBN:978-4-480-51216-1目次版元ページ

金沢滞在中に読了。室内照明の時代的変遷とともに、夜の生活が明るく長くなり、 “晩酌” という食文化もしだいに変わっていった著者の主張は納得できる。「晩酌=寝酒」から「晩酌≠寝酒」への移行。

『晩酌の誕生』の読みどころは、江戸時代の晩酌文化を論じた:第7章「江戸で花開いた晩酌文化」/第8章「晩酌の習慣が広まる」/第9章「多彩な晩酌の肴」/第10章「長くなった夜の生活時間」。計200ページにも及ぶこれらの章では江戸時代のさまざまな刊本から図版が引用され、眺めているだけで楽しい。

夜間照明と生活空間の質との関わりについては:乾正雄『夜は暗くてはいけないか:暗さの文化論』(1998年5月25日刊行,朝日新聞社[朝日選書600],東京,vi+235pp., 本体価格1,300円,ISBN:4-02-259700-3書評目次)という本にくわしく書かれている。その本では晩酌というテーマには言及がなかったので、本書『晩酌の誕生』は相補的な内容ともいえよう。