『フンボルト:地球学の開祖』

ダグラス・ボッティング[西川治・前田信人訳]

(2008年10月25日刊行,東洋書林, viii[color plates]+xiv+410+62 pp., 本体価格4,800円, ISBN:9784887217553版元ページ

19世紀はじめに未踏のオリノコ川流域をはじめ,南米各地の探検を行なった Alexander von Humboldt の大きな伝記.原書出版は今から30年前だが(Douglas Botting 1973, Humboldt and the Cosmos),日本語で読めるフンボルト伝がほとんどない現状を考えれば,いい訳業が出たといえるだろう.20年前のピエール・ガスカール[沖田吉穂訳]『探検博物学フンボルト』(1989年12月20日刊行,白水社ISBN:4560030170)は何といっても薄すぎた.地理学・気候学の先駆者としてのフンボルトの業績はあらためて再評価されつつあるのだろう.

前半100ページほどを読む.フライベルク鉱山学校を出たフンボルトは,鉱山を管理する役人としてドイツ各地まわったが,同時代の探検家たち(フォルスター,ブーガンヴィル,サンピエールなど)から大きな影響を受けていたという.第5章までで誕生から南米探検までの前半生が述べられている.

本訳書の資料性は,訳者による力のこもった解説と付録によって大きく高められていると思う.2名の訳者による解説記事が計50ページあまりもあり,さらにフンボルト関連小辞典(35ページ)と年譜など(10ページあまり)が翻訳に際して新たに付けられている.